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公開学習会
「高齢者見守りネットワークの現状と課題」を開催しました

【日  時】 2017年5月18日(木) 15:15〜17:15

【会  場】 主婦会館プラザエフ 5階会議室

【参加者】 48名

開催の趣旨

 改正消費者安全法に「消費者安全確保地域協議会」の設置が位置付けられましたが、協議会設置に向けた各自治体の動きは、まだ充分に進んでいないのが現状です。現在の協議会(または見守りネットワーク)の設置状況や活動内容の共有、協議会設置に向けた消費者団体としての関わり方や課題について考え合うことを目的に学習会を開催しました。

・ 「消費者安全確保地域協議会の状況について」
消費者庁 消費者教育・地方協力課 総括係長 琴野綾音氏

 改正消費者安全法(28年4月1日施行)によって、地方自治体が消費者安全確保地域協議会を設置できるようになりました。これまで地域では関係する役所や団体が参加した見守り活動が取り組まれていましたが、今回の法改正により、見守り対象者の個人情報を協議会の目的に沿って共有することができるようになりました。その上で「見守りネットワーク」の構築を目標として掲げました(人口5万人以上の全市町)。普段から高齢者の周囲に見守り活動のメンバーがいれば、消費者被害の未然防止に役立ちます。

 この協議会に対する消費者庁としての財政的支援は、地方消費者行政推進交付金です(約30億円)。福祉、または警察が関係する枠組みであっても、消費者被害防止に資するものであれば交付できるようにしています。また、先駆的プログラムとして、国から提案する政策テーマをふまえた自治体独自の事業についても対象としています。

 協議会の設置状況は(29年1月1日現在)、人口5万人以上の市町で設置されたのは21市、4道県と6市町(人口5万人未満)を加えると31自治体になりました。その中の先行事例を紹介いたします。

①北海道

 北海道消費者被害防止ネットワーク(平成15年設置)の活動が各市町村に広がり、道内に65の地域ネットワークが設立され、消費者被害の未然防止の取り組みが進められています。

①滋賀県野洲市

 「野洲市くらし支えあい条例」を制定して、協議会の設置も明記されました。具体的な取り組みは今年度から、市内の消費者被害情報の調査・分析、見守り事例の集積・課題の検討等を行う全体会議が年3回開催され、また別途担当者会議も開催されています。

③千葉県富里市

 富里市消費者行政推進連絡協議会は、「消費者行政充実ネットちば」とのシンポの提言をもとに平成23年に設立。28年に協議会の運営要綱が制定され、協議会が消費者安全確保地域協議会の機能も有することが位置づけられました。

・ 「消費者安全確保地域協議会推進に向けての取組み」
新宿区 文化観光産業部 消費生活就労支援課係長 黒木明子氏

 新宿区の相談員は6名が在籍しており、月〜金の9〜17時で相談を受けています。平成26〜28年にかけて区に寄せられた相談件数は、3,645、3,478、3,618件でした。また、区の60歳以上の人口比は24.3%となっており(平成29年4月1日現在)、高齢者からの相談が増える傾向にあります。

 新宿区の悪質商法被害防止支援事業としては、介護保険事業者・民生委員・保健センター等の協力を得て、悪質商法被害防止ネットワークを推進しています。そして、ネットワーク参加事業者に対して、悪質商法の手口や早期発見のポイントを学ぶ研修を実施したり、必要に応じて高齢者・障害者宅へ消費生活相談員が直接訪問し、相談に応じることも行っています。

 新宿区の消費生活地域協議会は、28年4月に設立され、29年4月に改正消費者安全法に基づく協議会として位置づけられました。協議会では、見守り協力員連絡会や町会の会合に出席して悪質商法に対する注意喚起を行い、消費生活センターの周知も図っています。また、相談者ご本人の同意を得て、地域包括支援センターにつないで、連携して訪問相談を行っています。なお、消費者安全確保地域協議会では、プライバシーに配慮した効果的な見守りについての協議を進めています。

・ 「目黒区見守りネットワーク(見守りめぐねっと)」
目黒区 健康福祉部 地域ケア推進課長 橘静子氏

 目黒区の見守り事業は、見守りめぐねっと・高齢者見守り訪問事業・見守りサポーターの三つの事業を取り組んでいます。

 見守りめぐねっとは、地域で異変や気がかりなことなど気付いたときに、地域包括支援センターに通報する仕組みです。協力団体には、町会・民生委員・障害者団体・商店街連合会・医師会・薬剤師会など26団体、事業者数は今年の1月で400事業所が登録しています。また、円滑な運営を図るための体制を確保するために関係機関連携会議(目黒警察署・碑文谷警察署・目黒消防署・権利擁護センター・地域包括支援センター・区の関係課、年2回開催)と、協力団体、登録事業者、協力機関などが情報を共有し、見守りネットワーク事業の推進を図るための見守りネットワーク連絡会(見守り協力団体の代表・協力機関の代表・登録事業者・地域包括支援センター・区長・区の職員、年1回開催)を開催しています。

 高齢者見守り訪問事業は、65歳以上の一人暮らし高齢者や高齢者のみの世帯を、地域の見守りボランティアが定期的に訪問する取り組みです。見守りボランティア127名、見守り希望高齢者72名が登録しており、現在ボランティア55名が高齢者67名の見守りを実施しています。見守りサポーターは、区民一人ひとりが地域を緩やかに見守る担い手となるよう、サポーター養成講座を年2回開催しており、延べ320名が受講しました。

・ 「東京の区市町村消費者行政調査活動の報告」
東京消費者団体連絡センター 事務局長 小浦道子氏

 2009年9月の消費者庁・消費者委員会の発足を受けて、地方消費者行政の充実・強化に向けて、2010年度より区市町村の消費者行政調査活動を取り組んできました。具体的にはアンケート調査により地域の消費者行政の実態を把握して、行政担当者と懇談して関係づくりを進めてきました。

 2016年度は、7月に都内53区市町村の消費者行政担当窓口宛にアンケート用紙を送付して、すべての区市町村から回収することができました。

 「地域の見守りネットワーク」の取り組み状況について、取り組んでいるのは29自治体、検討中は9自治体でした。また、消費者安全確保地域協議会が設置されていたのは2自治体(千代田区・多摩市)、検討中が2(新宿区・昭島市)、未設置が25という結果となりました。

 消費者行政の担当者からは、高齢者見守りネットワークは消費者被害防止についての有効な手立てとしつつも、新たに設置するのではなく、既存の組織との連携を活かした取り組みを検討しているとの報告もありました。そのためには各行政の福祉部局と連携して進めることが大切であり、消費者団体からの働きかけにより、福祉部局の担当者も含めた懇談が重要になってきます。

・ 「地方消費者行政推進交付金を活用した官民連携による取り組み報告」
埼玉消費者被害をなくす会 専務理事 岩岡宏保氏

 消費者被害防止サポーターは、被害防止の呼びかけや啓発イベントへの協力等を目的として、今後5年間に全県で700 人規模(県民1万人に一人)、63全市町村に各5人以上を確保して、地域で見守りの輪が広がることをめざしています。

 高齢者等見守り推進員は、埼玉県と地域で活動する消費者団体が一体となり、地域における見守りや啓発活動を推進するための「見守り推進員」として位置づけ、市町村における「消費者被害防止サポーター」の活用を進めるとともに、消費者安全確保地域協議会の設置の支援を目的としています(現在5名)。

 消費者被害防止サポーターは、2009年度に埼玉県の事業としてスタートして、2015年度になくす会としてフォローアップ研修1日を受託しました。2016年度は9回の養成講座を開催して201名が受講しました(159名登録)。また、フォローアップ研修は4日間の企画を2回開催して、127名が参加しました。2017年度の養成講座は18回の開催を予定しています。

 来年度からの「埼玉県消費生活基本計画」では、地域協議会に「消費者被害防止サポーター等」が位置づけられ、「消費者団体・消費生活協同組合や事業者など各種団体との連携を図る」「消費者団体やNPO、事業者、関連団体等との連携を図る」と進め方が明確になりました。当面、事業を成功させること、事業で培った力を今後のなくす会の活動に活かしていくことが求められています。

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