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2016年PLオンブズ会議報告会
「これでいいのか!廃棄食品不正流通」を開催しました

 今年1月に明るみになった廃棄食品の不正流通問題では、廃棄となるべき食品が私達消費者の食卓に上り、消費されてしまいました。

 食品安全、表示、食品ロス、廃棄物処理、リサイクルなどが複雑に絡みあう問題ですが、なぜこのような事態に至ったのでしょうか。廃棄物処理業者など事業者の対応が一義的には問われますが、国や自治体といった行政、特に消費者の安全を最優先すべき消費者庁は今回果たして司令塔の役割を果たせたのか、そして、再発防止のために事業者・業界団体・行政に望みたいこと、また消費者・消費者団体にできることは何があるのか、といった点について、報告とパネルディスカッションで深め合いました。

食品廃棄物問題から消費者安全行政を問う〜2016年PLオンブズ報告会開催概要〜

【日  時】 7月1日(金) 13:30〜16:30

【会  場】 主婦会館プラザエフ5階会議室

【参加者】 56名

【プログラム】

13:30〜 報告1 「食品事業者の廃棄ロス低減の取り組み」
加藤正樹さん((一財)食品産業センター技術環境部次長)
13:55〜 報告2 「廃棄食品不正流通問題に対する環境省の対応」
竹花英彰さん(環境省 大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課課長補佐)
14:40〜 パネルディスカッション
≪廃棄食品の不正流通問題から消費者安全行政のあり方を考える≫
パネリスト: 中山弘子さん(前新宿区長、元東京都生活文化局消費生活部長)
小山裕士さん(千葉県健康福祉部衛生指導課副課長)
宗林さおりさん(国民生活センター理事)
長田三紀さん(全国地域婦人団体連絡協議会事務局長、PLオンブズ会議)
コーディネーター: 中村雅人さん(弁護士、PLオンブズ会議)
16:20〜 PLオンブズ会議からの提言
『廃棄食品の不正流通を防止し、消費者の安全を確保するために』
PLオンブズ会議 太田吉泰さん

<ポイント(事務局による要約)>

●事業系食品廃棄物の発生量は平成24年度で1,916万トン、このうち食品製造業が約8割を占めている。食品製造業の再生利用実施率は95%。食品事業者としては、賞味期間延長の技術開発、各種副産物の飼料化、商品の小容量化、啓蒙活動などによりロスの削減を図っている。

●今回の廃棄食品の不正流通事案について、政府では消費者庁・厚生労働省・農林水産省・環境省・警察などによる「食品安全行政に関する関係府省連絡会議」を設け、今後の対策をとりまとめた。環境省としては、電子マニフェストの機能強化、廃棄物処理業者への監視体制の強化、排出事業者による転売防止対策の強化、などの再発防止策をまとめた。

●今回の事案について、千葉県では、国からの通知を受け、廃棄物指導課で県内廃棄物処理業者への立ち入り検査を行うとともに、衛生指導課も県の食品衛生協会を通じた事業者への注意喚起や、県の食品衛生監視指導計画に廃棄食品や回収食品に係る記録の作成保存を盛り込むなどの対応を行った。

●消費者庁は、緊急事態が発生した際には、司令塔機能を発揮し、各省庁を集め情報共有を行い、対応方針を決定していく。加えて消費者庁の役割としては、消費者に直接関係のある情報、たとえば対象となる製品の写真を事業者から正確に集めて消費者に知らせることなどが重要。

●東京都では、消費者行政の部門横断的枠組みをつくり、消費生活部門がヨコ串を通せるようにした。このことの意義は、緊急事態が起こったら司令塔機能を発揮して消費者への注意喚起を行うことや、他部門に消費者目線をインプットしていくこと、など。食品衛生・廃棄物部門など、監督権限を持っている部門は日常的にはきちんと対応していると思う。ここが消費者目線を持って動けるよう、情報共有を図ること、ノウハウとマインドを持つ人を育てることが重要だ。

●自治体で新しい組織を設けることは容易ではないが、現行の体制の中でも関係部署がいかに連携し、同じ方向を向けるかが重要。特に複数の部局にまたがる事案の場合、本庁だけでなく監視や指導に行く出先機関の役割が重要であり、業務の異なる出先機関同士がどう効果的に連携できるかについて検討することが必要である。

●今回の事案のような消費者には知りえない不正に対しては、公益通報が出やすい環境を整えておくことが重要。通報者保護の要件を見直すなど、公益通報者保護法の改正が必要である。また、不正を働いた事業者が損になり市場から退場させられる仕組みづくり(課徴金、懲罰的賠償、刑罰、業務停止)や、消費者志向経営を進めている事業者を応援する消費者の目線も重要である。

●食品ロスに関しては、削減に向けて消費者の役割も大きい。廃棄対象のものが食品として流通しないような措置をとることは大前提だが、食べられる食品は合理的な価格で取引をしていくことも必要。

 最後に、「廃棄食品の不正流通を防止し、消費者の安全を確保するために」と題して、事業者・行政・消費者それぞれが果たすべき役割についての提言を発表しました。

【提言】 廃棄食品の不正流通を防止し、消費者の安全を確保するために

 廃棄されたはずの「ビーフカツ」がスーパーで販売されたり、お弁当の食材に使用されていたというニュースには大変驚かされました。その後、当該食品卸売事業者の倉庫には、廃棄処理を依頼された35品目60製品もの商品があり、複数の食品関連事業者が介在しているなど廃棄されるべき食品の不正流通が大規模に行われていたという驚くべき事実が明らかになりました。幸い、食中毒などの被害が発生することはなかったようですが、消費者は廃棄されるべき食品であることを知らずに購入・消費していたのです。このような消費者の安全がおびやかされる事態が二度と起こらないようにしなければなりません。

 今回の問題は、食品安全・表示・食品ロス・廃棄物処理・リサイクルなどが複雑に絡み合うものですが、再発防止のために国や地方自治体などの行政機関の役割、特に消費者の安全を最優先すべき消費者庁の司令塔の役割等を検証するとともに、食品関連事業者、廃棄物処理業者の責任を明確にすることが必要であると思います。

 私たちは、食品関連事業者、中央省庁、地方自治体等の関係者の方々にも参加していただき、「これでいいのか!廃棄食品不正流通」と題して今回の問題について意見交換を行いました。

 私たちは、廃棄食品の不正流通を防止し、消費者の安全を確保するために、つぎのように提言します。

  • 1、食品関連事業者は、食品ロス削減の観点からも「食品廃棄物の排出そのもの」の削減に努めること。
  • 1、食品関連事業者は、食品を廃棄する場合には、そのまま商品として転売することができないような処理を確実に行うこと。
  • 1、排出事業者は、排出者責任を徹底すること。そのために、廃棄物のトレーサビリティを確実に実施すること。
  • 1、行政は、廃棄物処理業者の法令順守が徹底されるよう、抜き打ちの立入検査など再発防止策を実行するとともに、優良事業者の育成などを通じて廃棄物処理業者の透明性と信頼性の向上をはかること。
  • 1、消費者庁は、消費者安全に関する緊急事態等の対応においては、今後も司令塔の役割を発揮し、関係省庁と連携して速やかに対処すること。
  • 1、地方自治体は消費者の安全確保のために関係部局の連携を図り、緊急事態時に速やかに対応できるような体制を整えること。消費者庁はそのための支援を行うこと。
  • 1、不正防止のために公益通報者保護法が有効に機能するよう、速やかに法改正を行うこと(通報者保護の要件・効果等)。

 消費者・消費者団体は、消費生活の安全を確保するために行政及び事業者が十分に役割を果たすよう常に働きかけましょう。また、大きな課題になっている食品ロスの削減に消費者の立場から取り組みましょう。

2016年7月1日
PLオンブズ会議
一般社団法人 全国消費者団体連絡会

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