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国際消費者機構(Consumer International) 第20回世界大会 日時 : 2015年11月19日(木)〜20日(金) 開催場所 : ブラジル、ブラジリア 参加者 : タン・ミッシェル氏(全国消団連国際活動委員会委員長、消費者ネットジャパン理事長)、高木秀敏氏(消費者ネットジャパン理事)、中村良光氏(日本生協連組合員活動部)、河野康子(全国消団連事務局長) 2015年11月19日(木)〜20日(金)に2011年に中国の香港で開催された第19回大会以来4年ぶりとなる国際消費者機構(CI)の世界大会がブラジルの首都ブラジリアにおいて開催されました。世界大会にあわせて11月18日(水)には関連会議が、11月21日(土)にはCI総会とCIアジア・太平洋地域会議が開催されました。 1.全体日程
2.CI世界大会 日時 : 11月19日(木) 9:45〜17:45 参加者 : 世界中から700人超 テーマ : 消費者の力を解放しよう〜世界市場における新しいビジョン 基調 : 情報化や市場のグローバル化が進行する世界の中で、消費者の力をいかに発揮し、消費者の権利をいかに護るか、次のようなテーマ・分野で報告と意見交換が行われた。
(1) 歓迎・開会挨拶 〈19日午前〉 Dilma Rousseffブラジル大統領の到着を待ち、予定より約45分遅れで開会した。CIのJames Guest会長とAmanda Long事務局長が開会挨拶を行った後、Guillermo Valles氏(UNCTAD)が国連のBan Ki-moon事務総長のメッセージを代読した。メッセージの中でBan Ki-moon事務総長は、本年の第70回国連総会において「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、国連消費者ガイドラインが改定されたことに言及し、同ガイドライン改定作業におけるCIの協力に謝意を示した。 続いて、ブラジルのJosé Eduardo Cardozo法務相とJuliana Pereira da Silva法務省国家消費者局長が相次いで挨拶に立ち、20回目の節目のCI世界大会をブラジル開催で開催できることに歓迎の意を示した。 最後に、Dilma Rousseffブラジル大統領が挨拶を行い、消費者保護法(the Brazilian Consumer Protection Code)制定25周年を迎えたブラジルにおける消費者保護施策の現状と課題に触れた上で、実り多い大会となることを祈念した。
(2) 参加型パネルディスカッション 〈19日午前〉 テーマ : 急速に変化する世界における消費者の機会と課題 パネラー :
ビデオメッセージ :
司会者 : Nisha Pillai, Journalist and Moderator 概要 : 変化の激しい世界の中で消費者の権利の保護が実際に執行されることが重要で、各国内だけでなく国際的な取り組みの視点が重要であることが指摘された。ブラジルでは、基本的な消費財にアクセスできる層へのレベルアップが重要課題であり、対話を通した消費者と事業者の対立解消をめざしていることも報告された。会場からは、高齢者が金融サービスを利用しにくい問題などについて質問が出された。 (3) 参加型パネルディスカッション 〈19日午前〉 テーマ : 国連消費者保護ガイドラインの改定−ポジティブな変化をもたらす パネラー :
議長 : Amanda Long 概要 : 本年の国連消費者保護ガイドライン改定の成果について、各パネラーが意見を述べた。消費者保護法が整備されていない国にとって同ガイドラインは参考となるものであり、電子商取引や通信などトラブルの多い分野での各国や各地域のベストプラクティスから学ぶことが重要であることも指摘された。会場からは、国連消費者保護ガイドラインのさらなる強化の必要性などについて意見が出された。 (4) 講演 〈19日午後〉 テーマ : インターネットに関する消費者の権利章典−World Wide Web FoundationとCIのグローバルパートナーシップの開始 講演者 :
ビデオメッセージ :
司会者 : Nisha Pillai 概要 : 司会者が「インターネットに関する消費者の権利章典」の必要性について賛否を問うたところ、参加者の約6割、パネラー4人は全員が「必要」と回答した。インターネットを通した政府や事業者による管理強化が試行される中で、インターネット上での個人情報保護などの問題が指摘された。一方で、世界の約40%の人々がインターネットに全くアクセスできない現状も問題として挙げられた。 (5) 講演 〈19日午後〉 テーマ : 主流を行く−今日の消費者に適合させて 講演者 : Marta Tellado, President and Chief Executive, Consumer Reports (アメリカ) 概要 : Marta Tellado 氏は、CIとConsumer Reportsのこれまでの緊密な関係に触れた上で、ともに設立当初の情熱を引き継ぎ、今日の消費者に適合させて運動を再活性化していくことが課題であると述べた。グローバル化によって消費者が新たな問題に直面する中で、国際的な課題に取り組むことがCIの存在意義であり、CI会員にも互いに「つながる」ことを呼びかけた。 (6) 参加型パネルディスカッション 〈19日午後〉 テーマ : グローバル市場で消費者に良い影響をもたらすための協働 パネラー :
司会者 : Nisha Pillai 概要 : パネラーからは、国際的に協働が必要な消費者課題もあり、国際キャンペーンに共同で取り組むことは各国の消費者運動にとっても利益になるとの意見が出された。一方、会場からは、発展途上国においては国内の消費者課題と国際キャンペーン課題がしばしば相違する実情についても意見が出された。 (7) 講演 〈19日午後〉 テーマ : より多くの消費者に手を差し伸べ、より多くの支持を得るための新たな手法 講演者 : Bart Combée, President, Consumentenbond (オランダ) 概要 : 消費者団体の将来に向けた「4つの道」として、「(社会的な)インパクト」「関連性」「消費者の声に直接耳を傾けること」「アクセスのしやすさ」が示された。 (8) 講演 〈20日午前〉 テーマ : 消費者の信頼と関与を得るため、どのようにブランドを構築するか?−世界の消費者の動向 講演者 : Eric Whan, Sustainability Director, GlobeScan 概要 : 信頼度と透明性に関して各国政府やグローバル企業の評価が低い一方、NGOの評価が高い現状を示した上で、消費者の信頼を得てトップブランドと認められるための3つの柱として「ビジョンと戦略」「統合とパフォーマンス」「絆とコミュニケーション」を挙げた。 (9) 参加型パネルディスカッション 〈20日午前〉 テーマ : 将来展望−利用者のレビューやフィードバックは新たな商品テストとなり得るか? パネラー :
司会者 : Nisha Pillai 概要 : 比較テストの実施方法や課題(International Consumer Research and TestingとTest Achats)、利用者のレビューやフィードバックを検索情報に活用するシステム(Yelp)について、異なるビジネスモデルとして対比させる形で紹介が行われた。 (10) 参加型パネルディスカッション 〈20日午前〉 テーマ : 政府側からの洞察 パネラー :
司会者 : Nisha Pillai 概要 : 消費者保護施策を実施する政府機関等の立場から、それぞれの取り組み報告が行われた。司会者からは立場の特に弱い消費者の声を拾い上げる政府の施策について、会場からは消費者保護における省庁間協力や消費者教育の役割について、パネラーに質問が出された。 (11) 分科会 〈20日午前〉 テーマ : 消費者により良い価値をもたらすための革新事例・市場との関わり方 1) 救済制度の革新 報告者(CIのSpeaker Informationより) :
進行役 : Richard Bates, Head of Digital Initiatives, CI 2) コラボレーティブ経済の成長 報告者 :
進行役 : Onica Makwakwa, Interim Head of Africa Office, CI 概要 : コラボレーティブ経済またはシェアリング経済という新たな分野においても、ルールの確立や消費者保護が必要であるとの問題意識が出された。Marco Pierani氏は「消費者の権利に配慮した持続可能なシェアリング経済のためのマニフェスト」を会場に配布した。 3) 消費者のための節約支援 報告者(CIのSpeaker Informationより) :
進行役 : Indrani Thuraisingham, Regional Head, Office for Asia Pacific, CI (12) CI会員団体からの成功事例報告 〈20日午後〉 1) マーケティング 報告者 :
進行役 : Indrani Thuraisingham 概要 : 訪問販売お断り運動(ニュージーランド)、反迷惑電話キャンペーン(イギリス)、化粧品広告規制キャンペーン(インド)などの取り組みが紹介された。 2) 救済制度 報告者(CIのSpeaker Informationより) :
進行役 : Antonino Serra Cambaceres, Global Programme Manager, Consumer Justice and Protection, CI 3) 安全および基本的な財・サービスにアクセスする権利 報告者(CIのSpeaker Informationより) :
進行役 : Onica Makwakwa 4) 健康な食生活 報告者(CIのSpeaker Informationより) :
進行役 : Anna Glayzer, Advocacy Manager, CI 5) デジタル 報告者(CIのSpeaker Informationより) :
進行役 : Richard Bates, Head of Digital Initiatives, CI 6) エネルギー 報告者(CIのSpeaker Informationより) :
進行役 : Robin Simpson, Senior Policy Advisor, CI 7) 基本的な消費者の権利の尊重 報告者(CIのSpeaker Informationより) :
進行役 : Justin Macmullan, Head of Advocacy, CI 8) 持続可能性 報告者(CIのSpeaker Informationより) :
進行役 : Ian Fenn, Sustainability Consumption Project Coordinator, CI (13) 分科会 〈20日午後〉 テーマ : 共通の消費者問題と共同行動① 1) 抗生物質から肥満に至る健康問題−食品業界が創り出す世界的健康危機をいかにくい止めるか? 報告者 :
議長 : Sue Davies, Chief Policy Advisor (イギリス) 概要 : 耐性菌の問題(マレーシア)、ソーダ税導入や表示問題への取り組み(メキシコ)、政府による規制と企業の行動変革の必要性(International Food and Beverage Alliance)などについて報告が行われた。また、健康な食生活の保護・促進に係る国際条約策定や抗生物質規制など、CIとしても食分野の課題には重点的に取り組んでいることも報告された。 2) 今日の規格と明日の法−国際消費者運動はその影響力を強化できるか? 報告者(CIのSpeaker Informationより) :
進行役 : Sadie Homer, Senior Policy Advisor, CI 3) 持続可能な消費をさらに促進するため、民間セクターや消費者は何をすべきか? 報告者(CIのSpeaker Informationより) :
議長 : Ana Toni, Executive Director, Co-Founder GIP and Executive Director, Instituto Clima e Sociedade (ブラジル) (14) 分科会 〈20日午後〉 テーマ : 共通の消費者問題と共同行動② 1) ツーリズム・トラベル−世界第二の巨大市場〜どのような闘いが必要なのか? 報告者 :
進行役 : Phillipa Hunt, Campaigns and Communications Director, CI 概要 : 航空券、レンタカー、旅行者が巻き込まれる犯罪など、(国際的な)旅行分野のさまざまな消費者問題と消費者の権利擁護の必要性について各国から問題提起が行われた。 2) 消費者を貿易の中心に据える−グローバルな通商政策・交渉における消費者に好ましい議題設定に向けて 報告者(CIのSpeaker Informationより) :
議長 : Phil Evans, Inquiry Chairman, UK Competition and Markets Authority 3) 制御不能?−消費者を個人情報によって動かされる世界の運転者に 報告者(CIのSpeaker Informationより) :
進行役 : Richard Bates 4) 悪習をいかに根絶し、責任ある融資に導くか? 報告者(CIのSpeaker Informationより) :
議長 : Kate McKee, Senior Advisor, CGAP (15) 講演 〈20日午後〉 テーマ : デジタル世界における消費者のパワー 講演者 : Doc Searls 概要 : より多くの顧客を獲得することが事業者にスケールメリットをもたらした時代からインターネットを介して消費者側がスケールパワーを持つ時代への変遷、トラッキングに関して業界の自主規制よりも消費者個人による対策の方が有効である事例などが紹介された。ビッグデータの利用については、消費者問題として取り組む余地が大きいことも問題提起された。 (16) 閉会挨拶 〈20日午後〉 James Guest会長とAmanda Long事務局長が最後に挨拶を行い、第20回CI世界大会は閉会した。James Guest会長は会長職を退くことを明らかにし、会員団体の4年間の支援に謝意を示した。 3.CI総会
日時 : 11月21日(土) 9:00〜12:00 概要 : 総会は世界大会にあわせて開催され、CIの正会員のみが議決権と投票権を持つ。全国消団連は、この正会員としてCI総会に参加した。 2014年の会計報告、3本の特別決議(規約改正、今後の規約改正手続き、3月15日を「国連消費者権利の日」と定めるよう国連に要請する件)などの議案について採決が行われ、いずれも採択された。 規約改正はCIの運営機構改革に関連するもので、総会(General Assembly)、評議員会(Council)、理事会(Board)の権能を定めた条文などが改正された。
「国連消費者権利の日」に関する特別決議は、国連への要請時期も含めて次期Councilに判断を委ねる内容で、一部の正会員から「表現が弱い」「この総会で修正決議し、国連に即刻要請したい」旨の意見が出されたが、決議内容を総会で修正することは手続き的に不可能であることから、当初の提案内容のまま採択された。 次いで会長選挙が行われたが、Bart Combée氏(オランダ)以外に立候補はなく、全会一致で同氏の新会長就任が承認された。評議員選挙は、投票用紙に記載された候補者一覧の中から最大13人までを選ぶ方式で総会開会前に投票が行われた。選挙結果の他に、規約に基づき地域バランスなどを考慮して指名された評議員もいたが、得票数や当選順などは明かされず、新たな評議員名のみがJames Guest会長から口頭で読み上げられた。2015〜2019年までの理事・評議員は以下の通り(敬称略)。
前回大会(2011年 於・香港)以降の活動の概要報告は、評議員選挙の集計作業の間に、Amanda Long事務局長から口頭で行われた。 4.CIアジア・太平洋地域会議 日時 : 11月21日(土) 13:15〜14:30 概要 : CIロンドン本部からの報告(会員団体の参加促進、開発中のデジタルプラットフォーム構築について)に続いて、各国から最近の活動内容の紹介が行われた。その結果、地域内の共通課題として交通安全、抗生物質、TPP問題に(それぞれの問題に関心をもつ国の会員団体が)協力して取り組むことを確認した。韓国(Consumers Korea)は、東京電力福島第一原子力発電所事故(2011年)を理由に同国政府が一部の日本産水産物に課してきた輸入規制措置について、撤廃に反対する運動への賛同を求めたが他国から特段の賛意は示されなかった。 5.関連会議 (1) アウトリーチ・ワークショップ : 消費者とつながる - 規格を通じたエンパワメント 日時 : 11月18日(水) 13:30〜16:00 主催 : ISO/CI 概要 : 前半はCIのJames Guest会長が議長を務め「規格は消費者保護に有効か?」とのテーマで4人のパネリストと参加者が意見交換。後半は、下記(2)の分科会参加のため、河野全国消団連事務局長と中村は退席。 (2) 肥満問題と闘い、健康な食生活を営む消費者の権利を擁護するための公共政策 日時 : 11月18日(水) 15:00〜17:30 主催 : IDEC/CI 概要 : ソーダ税導入を求める取り組み(メキシコ)、食生活ガイドラインの概要(ブラジル)、不健康な食品のマーケティング規制(チリ)、子どもの肥満問題と消費者保護法(ブラジル)、アジア・太平洋地域の肥満の現状と各国の対策(CIアジア・太平洋地域事務所)、イギリスの肥満の状況と政府の対策、健康な食生活の保護・促進に係る国際条約策定に向けた取り組み(CIロンドン本部)の各報告。 6.Consumer Reports訪問
日時 : 11月17日(火) 10:00〜12:00 概要 : ブラジル入りの前日、アメリカの著名な消費者団体Consumer Reports(Consumer Union)のニューヨーク事務所を訪問した。Consumer Reports はCIの主要会員団体で、CI会長のJames Guest氏はConsumer Reportsの前会長である。 (1) 商品テスト施設見学 Michael Vallario氏(Manager, Test Technicians)の案内で、ベビーカー、テレビ、食洗機のテスト施設を見学した。 ベビーカーのテスト施設では、さまざまな道路条件でベビーカーが斜面をすべり落ちる場合の再現実験を行っていた。アメリカだけでなく、主要ブランドのベビーカーを各国から購入してテストを行っている。 テレビもさまざまな機種を揃え、画面の映り栄えや黒レベル、省エネ性能、使いやすさ、音質などについて、2週間に約10モデル(年間200モデル超)のペースでテストしている。4Kテレビなど最新モデルのテストが(コンテンツがまだ十分に揃っていない等の理由で)課題だという。 食洗機のテストでは、年間を通して条件を均一に保つため、市販されていない特殊な洗剤を用い、水の硬度も統一して、水の使用量や食器の洗浄度などを調べていた。
(2) 意見交換 テスト施設見学の後、Michael Hansen氏(Senior Scientist)、Joan Muratore氏(Program Leader)と、子ども用品の安全性について意見交換を行った。当初面会予定だったChuck Bell氏(Programs Director)が急用で不在となったため、両氏に対応いただいた。
子ども用品テスト部門の主要問題として、ベビーベッドの落下防止柵が強度不足で壊れてマットレスとの間にできた隙間に赤ん坊が首をはさむ問題や、ベビーカーの手すりに赤ん坊が首をはさむ問題がとり上げられた。アメリカではベビーベットのこの種の事故による死亡者数は年間200人を超え、Consumer Reportsの取り組みもあって、落下防止柵の一部を上下できる機能は禁止されたという。「日本政府もこれらの事故情報を収集して対応すべき」との意見をもらった。 全国消団連第1回国際活動専門委員会(2015年10月1日)において要望が出された、スマートバービー人形問題〈子どもとバービー人形の「会話」を通して、その家庭の個人情報が自動的に収集・蓄積され、ビッグデータとして同意なしに活用されかねない問題〉についてもChuck Bell氏には予め照会していたが、急遽対応いただいたお二人には専門外で情報を得られなかった。 以上 |