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全国消団連PLオンブズ会議2012年度報告会
「この事故、調べてくれますか?」
〜消費者安全調査委員会のスタートに向けて〜
を開催しました

 去る6月27日の13時半から16時半、主婦会館プラザエフ5階会議室にて、全国消団連PLオンブズ会議2012年度報告会を開催しました。

 今回は『「この事故、調べてくれますか?」〜消費者安全調査委員会のスタートに向けて〜』をテーマに、現在国会上程中の「消費者安全法の一部を改正する法律案」の柱として、長年にわたって消費者団体が設置を求めてきた、消費者事故の事故原因を調査して再発防止を実現するための「消費者安全調査委員会」の在り方について、関係者からの報告とパネルディスカッションで深めました。今回は54名にご参加いただきました。

【主な内容】

会場の様子

報告

 「新しく作られる消費者安全委員会とは」
 消費者庁審議官 川口康裕さん

 現在検討中の委員会の姿や、その内容等々について説明をいただきました。その上で「国会での審議を急ぐと共に、痛ましい事故が発生する中、委員会が発足した際には、どのような教訓を得てどのような再発防止策ができるかを自問自答している。また、製品問題については、事故情報の収集・公開及びADRの整備が進んできたが、原因究明についてはこれからの課題であり、法律の改正が認められて、委員会を設置できるようになれば一歩前進となる。消費者庁としても、皆様の協力をいただいて、全力で取り組みたいと考えている」と話されました。

報告

 PLオンブズ会議による「消費者安全調査委員会」調査の事例検討

 PLオンブズ会議メンバーより、現在、事故の原因調査を行う機関が定まっていない、三つの製品分野での事故、具体的には@立体駐車場、A乗用車のスライドドア、B介護ベッドによる事故について、それぞれの事故の経緯や製品の問題点等の紹介した上で、「消費者安全調査委員会」が何を調査対象とするのか、どのように調査されるのか、調査の際に懸念されること何かなど、「消費者安全調査委員会」の設置に向けた問題を提起しました。

パネルディスカッション

 望ましい「消費者安全調査会のあり方」について、パネルディスカッションで検討しました。ファシリテーターはPLオンブズ会議メンバーで弁護士の中村雅人さんが勤めました。パネリストは以下の皆さんです。

消費者庁消費者安全課課長補佐   白石裕美子さん
国土交通省運輸安全委員会 専門官   木村よし子さん
明治大学理工学部教授   向殿政男さん
「新しい事故調査制度実現ネット」   河村真紀子さん(主婦連合会)

 まずは、消費者庁に設置された「事故調査機関の在り方に関する検討会」の委員をお務めだった、明治大学理工学部教授の向殿政男さんに、消費者庁での検討会の様子をご紹介いただきながら、「捜査機関との連携など大きい枠を提案してきたが、専門性が問われる中、全体の協力体制を整えない限り、この人数では運用は無理ではないか。もっと大きい独立した機関で望みたいところだが、ここまできたら一刻も早く立ち上げて欲しい」と、問題意識をお話しいただきました。

 続いて、向殿さんと同じく「事故調査機関の在り方に関する検討会」委員を務められた「新しい事故調査制度実現ネット」河村真紀子さんより、「事故調査に関しては、どのような事故においても安全に対する共通の理念があること、被害者は真実を知りたいのだということの2点がポイントとなる。まずは『消費者安全調査委員会』を設立した上で、必要な修正を加えて理念の追求を期待したい」との発言がありました。

 「消費者安全調査委員会」の在り方を考える上での先例として、国土交通省運輸安全委員会専門官の木村よし子さんに、国土交通省「運輸安全委員会」について、その発足の経緯や業務の流れなどをご説明いただきました。そして、「運輸安全委員会」は事故原因の究明に徹している機関であり、被害者への配慮を常に心掛けていることをお聞きしました。

 その中で、JR西日本福知山線脱線事故調査の際、調査メンバーからJRへ調査情報漏えい疑惑が発生したことを受けて、ミッションと行動指針を盛り込んだ業務改善アクションプランを策定し、実施状況を具体的に振り返っていることや、また委員会の独立性を担保するために調査官の資質も問われていることから、「運輸安全委員会」として、調査官の養成機関設立を検討していることなどもお話しいただきました。

 お三方のご報告の後、消費者庁で「消費者安全調査委員会」設置の向けた担当事務局の消費者安全課課長補佐の白石裕美子さんにも加わっていただき、向殿さん、川村さんとの間でディスカッションを行いました。

 調査対象の選定方法や選定基準作りなど、委員会としての調査対象として追いかける範囲や、委員会の人員と予算、年間調査件数の目標、過去の事故にまで遡及した調査の実施など、これまでに懸念されて来た事項について、白石さんとの間で質疑が行われました。

 そして、白石さんからは「消費者安全調査委員会」の基本的なスタンスとして、被害の拡大防止を目的とした消費者目線の原因究明調査を行う、といった説明をいただきました。

 最後に、河村さんからは「全ての製品事故に共通する一つの理念のもとに様々な事故調査が行われるべきで、安全基本法レベルの理念の制定が必要と考える。加えてスケールメリットというものも考えなければならない。消費者庁に事故調査機関が創設されることはその第一歩として期待している」とお話いただきました。

 また、向殿さんからは「今回設立される事故調査機関について、運輸安全委員会のものと事故調査の共通思想はあると思う。このことは消費者庁内部でも話し合われており、今回の話で再確認することができた。私は、様々な事故を貫いている、安全そのもの対する共通理念があると考える。原発や震災を乗り越え、日本はそろそろ安全について考え、世界に発信するべき立場にあるのではないか。今回の調査機関も、その第一歩として育ってほしい。そして、運輸安全委員会も先輩格として、互いに協力して安全を目指して欲しい。」と述べられました。

 消費者庁の白石さんは、確実にスタートを切れる体制をとってスタートし、将来的に運用を充実させること、消費者団体をはじめとする関係者からの協力が必要であり、関係者の見守りと協力を呼び掛けました。

 
パネリストの皆さん   提言の提案

提言の提案

 提言「消費者に役立つ事故調査機関の在り方」(案)  PLオンブズ会議

 報告会の最後に、PLオンブズ会議において取りまとめた提言「消費者に役立つ事故調査機関の在り方」(案)を読み上げ、参加者の皆さんの拍手でご確認いただきました。

提   言

 私たちPLオンブズ会議は、わが国に欠けている消費者事故等の調査機関を創設するよう、現在国会に提出されている消費者安全法の一部を改正する法律案をめぐって検討してきました。

 具体的には、最近多発している立体駐車場での転落事故、介護ベッドでの事故、車のスライドドアの事故について調べたところ、事故原因が究明されていない現状があることを知りました。

 そこで、新しく消費者庁にできる事故調査機関「消費者安全調査委員会」がこれらの事故原因究明にどこまで機能するのかを、消費者庁との質疑や制度創設を審議した検討会委員の皆さんとともに検証してみました。また、わが国に存在する事故調査機関の先輩格「運輸安全委員会」からも、原因究明の現状や改善点を学びました。

 これらの検討の結果、私たちは、消費者庁をはじめとする関係機関に、次の諸点を要望いたします。

1 私たち消費者は、今日まで手がつけられてこなかった沢山の消費者事故について、消費者庁に創設される新たな事故調査機関で原因究明をしてもらいたいと希望していますが、今予定されている予算や人員の規模では、不十分です。今後、予算・人員を増やすべきだと考えます。国の予算や人員は、実績を上げ必要性が認識されることで増大します。そのためにも新たな事故調査機関「消費者安全調査委員会」では、事故原因を深く掘り下げて、明確な再発防止勧告を出すよう期待します。

2 消費者に役立つ原因究明をするためには、新たな事故調査機関の事務局、委員、調査専門家が、事故調査の意義・目的・手法等に対し、運輸安全委員会だけではなく、海外の事故調査機関の先例を学ぶなどして、真に消費者のためになる成果を上げるようにすべきです。

3 新たな事故調査機関での事故調査にあたっては、捜査機関に証拠収集を独占させることなく、原因究明に特化した調査に、同時並行的に入ることができるよう、警察庁などと十分調整し、ルールを確立すべきです。

4 新たな事故調査機関では、他機関が既に調査した事故や、過去に社会問題になりながら未だに原因究明が不十分な事故についても、消費者目線から改めて評価しなおし、果敢に調査するべきです。

5 新たな事故調査機関だけでなく、他機関における事故調査においても、今後消費者の視点から原因究明や改善勧告をするように姿勢を変えるべきです。

 ところで、本日現在、消費者安全法の一部を改正する法律案は、国会で審議中です。私たちが本報告会で指摘した上記の課題は、国会審議の中で確認され、附帯決議などに引き続き検討することを明記するべきです。

 そのうえで、早期に法案を成立させ、「消費者安全調査委員会」が予定通りスタートすることを望みます。

2012年6月27日
全国消費者団体連絡会
PLオンブズ会議

PDF版

提言「消費者に役立つ事故調査機関の在り方」(案) 【93KB】

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