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全国消団連 ホントのことを知りたい!!学習シリーズ

「東京電力福島第1原発事故の現状報告と
東京電力の電気料金の値上げについて」

日時:2012年5月31日(木)13:30〜16:30(於 ルーテル市ヶ谷センター)

参加者:66名

【内容】

 全国消団連の阿南事務局長より、会の趣旨説明とこの間の消団連の取り組みについて報告しました。その後、東京電力鰍フ報告を二つのテーマに分け、「東京電力福島第一原発の現状について」を東京電力(株)原子力品質・安全部長 福田俊彦さんにご報告いただき、「東京電力の電力料金値上げについて」を東京電力(株)営業部長 増田宏さんと東京電力(株)電力契約部 太刀川裕之さんよりご報告いただきました。その後、参加者には少人数のグループに分かれて報告についての意見交換を行い、最後に報告者との間で質疑応答を行いました。

【質疑応答】

1.福島第一原発の現状について

Q.今回の事故は津波による損傷のみを前提として話されていたが、そもそも地震による損傷もあったのではないか?今後、地震による原発損傷への対策は?

A.地震により送電鉄塔が倒れるなど外部電源は無くなったが、発電所内の非常用ディーゼル発電機が設計通りに起動し、電気を供給した。設備の損傷については、これまで安全上重要な設備について確認できる範囲で確認を行った結果、損傷は確認されていない。また、地震発生直後から津波の襲来までは、発電所の設備は設計通りに機能していることが、各種計測値の記録によって確認できており、地震による安全性に問題があるような損傷はなかったと考えている。なお、外部の電源についても今後は耐震性などを見直すことになっている。

Q.今後地震などによって電源喪失し、4号機プールに注水ができなくなった場合、大量の燃料棒の温度上昇シミュレーションは?その対策は?

A.現在、水面から燃料の上端までの水深は約7mある。仮に電源が失われて冷却ができなくなった場合、プールの温度が上昇し水が蒸発していくことになる。しかしこの場合であっても、水面が燃料の上端から2mの位置まで低下するまでに16日かかることがシミュレーションによって分かっており、水がすぐになくなる状況ではないことから、この間に他の注水手段を講じることができる。また、冷却系統はもともと2系統あり、さらにその他にも消防車など機動的な方法で外から注水が出来るように準備をしている。

Q.汚染水による魚の放射能汚染について、北米へのマグロなど回遊魚でも放射線物質が検出されたが今後の対応は。

A.魚に対する汚染については、文科省などで20km圏内はサンプリング調査し状況は把握している。今後も調査は継続する。

Q.今も出続け増え続けている汚染水そのものの対策は。

A.最近、ホースからの漏えい事象などでご心配をおかけしたところであり、ホースをより強度の高いものに替える、あるいは、漏えいが発生すると考えられる場所の周囲に堰を設けるなどして対応をし、海に流れていかないように対策を実施している。原子炉を冷却した後の汚染水にはセシウムや塩分が含まれており、これらを除去して再度原子炉の冷却水として利用している。現在、セシウム以外の微量に含まれる他の核種についても除去する対策を進めている。また、セシウムを取り除く際に発生するゼオライトなどの廃棄物については敷地内で貯蔵している。

Q.原発停止により現在は火力に頼っているのでCO2排出は増えているはず、対策は?また東電は他のエネルギーの開発は考えているか?

A.これまで熱効率の高い火力発電を採用する取り組みを行ってきており、最新鋭のコンバインドサイクルの発電効率は59%となっている。今後も発電効率を向上する努力を継続する。太陽光発電については、メガソーラー発電所の運用を開始しているが、まだ供給力としては小さい段階である。

Q.津波対策がポンプ車や消防車の増配置、という話だったが、廃炉までには40年かかると聞いている、もっと恒久的な対策がされないと心配。

A.当社の柏崎刈羽での取り組みについてご説明したい。まずは、海抜15mの防潮堤を設置する工事を行っている。また、重要な設備がある建屋については止水対策をすることにより、水が入ってこないようにしている。さらに高台にガスタービン発電機車を設置しており、そこからケーブルを原子炉建屋の方まで既に引いてある。

Q.大地震で広域の停電が発生した際の対策は?

A.今回の事故の教訓として、広範囲にわたる震災においては、発電所の外からの支援が得られないことが考えられる。そのため、電源車や消防車など、緊急時に必要となるものは、予め必要な台数を発電所の中に備えることとしている。特に柏崎刈羽の場合は、燃料タンクを追加設置するなど、外部からの補給路が絶たれても発電所内の備蓄分で持ちこたえられるようにしている。

Q.廃炉後の燃料の保管・処理は?

A.燃料の最終処分については、今後検討が行われることとなっている。特に燃料デブリ(燃料棒が溶融し被覆管と燃料ペレットが混ざりあったもの)については、今の原子炉内の状況について調査が必要であり、今後の課題であると考えている。

Q.菅元首相が3.11の際「東電から報告が来なかった」と言っていたが、国からの常駐の人が居たはず。その人は何をしていたのか?

A.東京電力からは出せる情報はすべて保安院に出していた。この後の情報の伝達については存じ上げない。また、国からの検査官の方は震災時に当初発電所にいらっしゃったが、オフサイトセンターに移動され、その後、防災センターが福島市の方に移ったため、発電所にはいらっしゃらなかった。そのため、発電所の情報を検査官の方から直接保安院や官邸に伝えるという形にはなっていなかったと聞いている。

2.電力料金の値上げについて

Q.説明では値上げの中身は燃料費がメインになっている。燃料費をどう下げるか、石油やLNGを高く買っている(商社が儲けている)のではないか。安く買う努力は?

A.共同購入など、購入価格の低減に向けてあらゆることに取り組んでいく。LNGは約20年の長期契約で、中途での価格交渉は難しい。5年毎に行われる契約更改等の機会をとらえ、購入価格の低減に努めたい。具体的には、北米の安いシェールガス価格にリンクした購入価格を実現したい。シェールガスの購入は、実現まで時間がかかるが、韓国の動きもあり、遅れずに対応していきたい。

Q.3.11以前にオール電化にした。深夜料金が安いので経済的だったから。値上げは約束違反ではないか?

A.当社としてお勧めしてきたなかで、値上げによりご負担をおかけして大変申し訳ない。ただ、他エネルギーとの比較では、現在申請中の料金でもオール電化の方が安く経済的と考えている。

Q.料金設定の仕組みは説明してもらったが難しい。株主配当や借入金の利息がそのまま料金に反映されるのはおかしいのではないか。事故に対する株主責任や貸付責任は?

A.料金の仕組みについては、TV出演や訪問活動等を通じてわかりやすい説明に努めて参りたい。設備建設のための借入金などの金利があり、これについては払い続けていかなければならない。事業報酬はそれを賄うもの。当社は、福島の事故収束、賠償、安定供給の3つの重要な使命を果たした上で、収支を安定化させていかなければならない。この中で、株主責任や貸付責任については、全体として各々の責任をどう見ていくかのご判断かと考えている。

Q.普通の企業で赤字だったら株主配当はない。生協も債務超過なら出資配当はない。

A.当社の収支状況を踏まえ、当面配当は困難と考えている。

Q.太陽光発電の買取の実態は?

A.H23年度末時点で約30万件。H23年度の買取金額は270億円の規模である。最近の毎月の加入実績は7〜8000件/月程度。

Q.今日の資料(P10など)説明を聞いてもさっぱり分からない。

A.東電の役員はTVに出て説明している。公聴会も質問に答える場も設定する。

Q.原発の発電単位価格は安いと言われてきたが、今まで公表されなかった費用や賠償金、事故処理費用、廃炉費用など入れたら相当割高になるはず。なぜ柏崎の再稼動にこだわるのか?

A.今回の料金原価は柏崎刈羽原子力発電所の稼動を仮定しているが、原子力発電にかかる燃料費は1.5円/kWh程度。これに対して火力発電は10円/kWh程度燃料費が高くなる。原子力の稼働により全体のコストが下がるという経済性が、再稼働をお願いする理由のひとつ。また、今夏は、緊急電源等を立ち上げつつ、皆さまに無理のない節電を頂き、なんとか安定供給が確保できる見込みである。しかし、原子力が電源として活用できればこのような綱渡りをすることなく安定した電気の供給が可能になるという点が再稼働をお願いするもう一つの理由である。なお、地元への寄付金については、今回、料金原価に算入していない。

Q.人員削減すると、解雇された人には雇用保険が支払われるが、これは社会に費用を負担させることになるので、人員削減は止めるべき。解雇しないで全員の給料を切り下げて対処せよ。社会に負担を回すな。

A.ご指摘はご意見として承る。

Q.料金の計算は柏崎刈羽原発の再稼動を見込んでいる。柏崎刈羽再稼動を含めない場合の料金はどうなるのか?

A.再稼動を仮定した場合は10.28%の値上げとなるが、再稼動がないとした場合、燃料費は+1円30銭/kWh上昇し15.87%の値上げとなる。なお、これらの数値は論点として電気料金審査専門委員会に提示させて頂いたものであり、決して、柏崎刈羽原子力発電所が稼働しないと、さらに値上げ率が上昇することを主張するものでないことをご理解頂きたい。

Q.原価に電源開発促進税、再処理費用(560億/年)が含まれるのは何故か?

A.電促税は、電源開発促進税法で0.375円/kWh の税率が定められていることから、納税者としての立場から今回の料金原価に計上させていただいている。また、再処理費用についても、国の法令に則り積み立てるものであり、今回の料金原価に516億円/年を計上させていただいている。

Q.2007年電力自由化に電力会社が反対したのは何故か?

A.自由化範囲をどこまで拡大するかについては、そのメリット、デメリットを複眼的によく見極めて判断すべきと考えている。全面自由化が遅れたのは電力会社が邪魔したのではないかとのお話があったが、全くそういうことはない。前回の全面自由化の議論の際は、現時点で全面自由化しても費用対効果は望めないとする論文が電気事業分科会に資料として提示され判断の拠り所となったと記憶している。

以上

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