[このページについてのご意見、お問い合わせなどはメールにて webmaster@shodanren.gr.jp までお送りください。]

全国消団連・トップページへ戻る


ホントのことを知りたい!学習シリーズ
金子勝さんに聞こう、話そう、原発のこと!
〜電力料金値上げ、原発再稼動をどう考えるか?〜
開催報告

時所:3月8日(木)13:30〜16:00 主婦会館プラザエフエフ7階 カトレア

講師:慶應義塾大学経済学部教授 金子 勝さん

参加:92名

内容:

【全体的な流れ】

 主催者を代表して、主婦連合会の山根会長にご挨拶いただいた後、全国消団連の阿南事務局長より、講演を聞く上での前提となる、電力料金、更には原子力発電に関する国の検討や消費者の意識などを報告しました。

 そして、講演を二つのセッションに分けて、「電力料金値上げをどう考えるか」と「原発再稼動をどう考えるか」を金子勝さんにお話しいただきました。

 通常の学習会と形式を変え、講演⇒少人数のグループで意見交換⇒講師への質疑⇒講演少人数のグループで意見交換⇒講師への質疑という流れで進めました。

【報告と講演のあらまし】

1.原発と電力料金をめぐる状況報告 全国消団連事務局長 阿南久

 2010年6月に決定した「エネルギー基本計画」では、2030年に電力供給の過半を原子力に依存するシナリオになっているが、3.11東日本大震災、福島第一原発事故を受け、この計画を白紙から見直すことになり現在各委員会で検討が進められている。

 2012年春には国民に「選択肢の提示」を行い、国民的議論を進める計画。

 これまで安いと言われてきた原子力のコストは、2004年の試算(5.9円/kWh)に含まれていなかった立地交付金などの政策費や賠償・除染・廃炉費用などの事故リスク対応費用なども含めると、最低でも8.9円から10.2円/kWhに上昇し、LNG火力等他の発電方法と比較して優位性に乏しいことが判明している。

 消費者の意識(日本生協連アンケート調査結果)も事故後は原子力に対するネガティブイメージが増え、原発はこれ増設せず(長期・短期含め)全廃すべきだと考える人が多くなっている。

2.プレゼンテーションとグループディスカッション、質疑応答

慶應義塾大学経済学部教授 金子 勝さん

テーマ
(1)「電力料金値上げをどう考えるか」
(2)「原発再稼動をどう考えるか」

●電力需給:
原発が全く稼動しなくても現在日本の電力はほぼ足りている。政府も一昨夏のような猛暑に見舞われない限り、供給不足にはならないとしている。夏期の数日、それもピーク時の数時間不足するかもしれない程度であれば、その時間帯だけ電力を大量に使う工場の稼動を止めるなどピークシフトを行えば乗り切れる。さらに3.11以降の緊急節電対策で実現した需要の削減やPPS(特定規模電気事業者)の発電を進めるなど、他にも工夫の余地がある。

●電力料金の値上げは何故必要なのか:
電力会社やマスコミは「原発停止→火力発電の増加→原油価格の上昇」により「電力料金の値上げが必要」としているが、この燃料費上昇=赤字原因論には落とし穴がある。事実、原発を持たない沖縄電力は2011年第三四半期(10〜12月)、減益とは言え黒字を出している。何故か。電力料金は総括原価主義で家庭用については燃料コスト上昇を電力料金に加算でき、既に私たち家庭用電力料金では燃料費上昇分は支払っており、ここであらためて「燃料費上昇→電力料金値上げ」を持ち出す必要は全くない。問題になるのは企業など料金が自由化されている「大口需要家」(自由化されているので、電力会社間の値引き競争=値上げしにくい)と、「稼動できない原発の維持コスト」。原発は、稼動している限りは発電=商品=収入が得られる。しかし稼動しなければ収入は得られないにもかかわらず、毎日膨大な「維持・メンテナンスコスト」がかかる。原価償却済みの老朽原発で発電すれば、固定資産税がかからない分、なおさら収益が上がる。固定資産税は20年立つと大幅に減るので、原発の稼働年限を、20年から40年、60年と引き延ばしたがるのはこのため。稼動していない原発は巨大な「不良債権」。(稼動の見込みの立たない六ヶ所村再処理施設も同じ。)日々膨大な赤字を生み続けるので「電力料金の値上げ」をしなければ、数年で自己資本を食い潰し、電力会社は経営破綻する仕組みになっている。電力会社やマスコミによる「燃料費上昇しているから電力料金の値上は必要」という誤った情報に対して、消費者は否、という声を上げて欲しい。

●原発被災者への賠償:
福島原発事故による被災者への賠償や除染の費用はどう考えれば良いだろうか。現状は、出せる金が無いために支払い時期をできるだけ引き伸ばしているように見える。住民を被曝させたまま平気で放置しているのは、2〜3年すれば自然減衰で線量が一定下がり、保障コストを抑えられると考えているのかもしれない。本気で住民を被曝から守る気があったなら、早期の徹底した除染(一定線量以下の地域)や処理施設の建設など、もっとできることがあったはず。いずれにせよ、除染・賠償の費用は発生する。除染費用は放射線物質をバラまいた東電に支払わせなければダメ。電力会社を国有化した場合、料金値上げか税金か、どちらにしても負担するのは国民。

●放射線被曝と健康被害:
放射線の人体への影響・因果関係は、高線量被曝による死亡・癌などの極端な例しか証明されていない。今後長期にわたり広く発生する可能性のある、慢性の倦怠感、免疫障害・免疫力の低下などは、おそらく被曝との因果関係は証明できず(被害者が証明しなくてはならない!)、加害者にあたる電力会社や国家は賠償しない。

●原発再稼働を議論するなら:
老朽、活断層に近いなど事故・地震などのリスクが高く絶対に動かしてはいけない原発を、リスクの高い順にリストアップして行き、リスク高い原発の再稼働は断固反対、という議論をしなくてはならない。そうしなければ、ずるずると再稼動が始まっても阻止・反対する論拠を持てない。具体的には、福島第一原発はもちろん、東海地震震源域上にある浜岡原発、東日本で大きく揺さぶられている東通・女川・福島第二原発・東海の各原発。そして原発銀座(一定エリアに複数の原発が立地しているもの)は、一度事故が起これば連鎖のリスクは累乗で高まる。結果的に日本の全ての原発は稼動させられない、という結論に至るかもしれない。

●原発技術は借り物:
福島原発以後広く知れ渡ったように、日本の原発技術は米国からの借り物で、自国の技術とは言えない。輸出などもっての他。原発→プルトニウム生成→潜在的国防(核兵器製造能力)をうたう人もいるが、それなら、原発(技術)を輸出(=他国の核兵器製造能力を高める=日本に対する脅威が高まる)するのは矛盾している。

●脱原発は可能か:
太陽光発電や風力発電など「不安定な再生可能発電」は(1)蓄める(2)ネットワークで繋ぐ(3)ガス発電など可変発電で補う、など様々な方法がある。日本は東西ヘルツ問題や長距離送電ロスに対して、コンバーターや超伝導など高い技術を持っているのに、自分の国では活用してない。バイオマス発電、太陽熱利用、燃料電池、そして省エネなど、原発に依存しなくても私たちは様々な手段を持っており、十分対応できる。

【参加者間の意見交換】

 二つのテーマ毎に、参加者の皆さんの感想を付箋紙にまとめていただきました。更に講師への質問なども含めて、少人数のグループで意見交換していただきました。感想を集計した結果は次の通りです。値上げ反対、原発再稼動反対という感想が最も多いものとなりました。

質問 賛成 反対 どちらともいえない
電力料金値上げをどう考えるか 10人 57人 12人
原発再稼動をどう考えるか 5人 61人 12人

※途中でお帰りの方や意思表示されなかった方がいたため、合計数が異なります。

≫ 開催案内はこちら