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全国消団連 地方消費者行政シンポジウム

「地方消費者行政の充実・強化をもとめて」
−活性化基金後の国の財政支援を考える−

2011年10月29日(土)13:00〜16:00
弘済会館 4階 蘭  64名参加

 

 現在消費者庁が示している、“集中育成・強化期間“後の消費者行政支援策の検討状況は、「地域主権改革」に則り、地方自治体が自らの裁量で地方消費者行政を推進することを前提にしたものです。更なる充実を求める声の多い国による財政支援に関しては、使途を限定したものではなく、一括交付金のような大きな枠組みを設ける方向を示しています。

 そこで、地方消費者行政の現状、国の施策検討状況を聞きながら、地方消費者行政充実・強化に着実に結びつく国の財政支援のあり方について考えるためのシンポジウムを開催しました。

*第一部

 阿南事務局長からの開会の挨拶の後、第二部のディスカッションの問題提起として、弁護士池本誠司さんと消費者庁地方協力課課長 林俊行さんから、ご報告いただきました。

(1) 「私たちの暮らしから見た、地方消費者行政の現状と課題」

弁護士 池本誠司さん

 明治以降は産業育成中心から、消費者の安全、住民の暮らしの安全を守るということを行政の役割として大きな転換点に据えようと、1年前に消費者庁が発足した。その際、国に新組織ができただけでは何の意味もなく、地域の現場が住民の暮らしに軸足をおいた形で消費者本意の行政にならなければいけない、そのためには地方自治体自らが消費者行政部門に予算・人員を十分配分し、相談窓口等の整備をすることを目指すこととなった。それに伴い、国としても相当な財源確保に努める、ということが、消費者庁発足時の国会等で確認された。そしてこの間、(1)地方交付税措置 基準財政需要額を倍増するというもの (2)活性化交付金 3年間で223億、その後1年延長で4年間となっている (3)光交付金、の三つの財政措置が講じられた。これらの財政支援について、消費者庁での現状評価、あるいは現在の体制強化がどこまで進んでいて、本来の目標に対してどこまで到達して何が足りないのか、これから何を目指すのかという、実体認識の議論をしていく必要があると思う。

(2) 「“集中育成・強化期間”後の地方消費者行政の充実・強化に向けた取り組みの検討状況について」

消費者庁地方協力課課長 林 俊行さん

 財政的支援について、今の消費者庁の取り組みについて説明されました。

ア. 地方交付税措置 当初平成21年度の交付税を決定する際に、交付税の算定上の相談員の報酬単価を150万円から300万円に引き上げると同時に、基準財政措置の中の枠を90億円から180億円に拡充した。交付税は自治体の自由裁量なので、算定基準が見直されたからといって、自動的に積まれた分がその行政分野に使われるというものではない。交付税の仕組みというのは、財政需要に応じて交付税措置を行っていく、行政的に需要があるところに資金を配分していく前提で総額を決める、という仕組みなので、実際、使い切れなく算定上180億円詰まれているものに対し120億円しか使われていないということが、大きな問題である。
イ. 活性化基金 消費者庁が創設する前に当時の自民党政権が、消費者行政を3年間で、特に市町村の相談窓口や消費生活センターを新増設していくような、インフラ的な環境整備のために、活性化基金として3年間で290億円という額を積んだ。基金は、年度途中で一年目をスタートした割には、皆さん非常にがんばって、特にセンターの開設など、有効に使っていただいていると思っている。残りの時間は限られているが、有効活用してもらいたい。
ウ. 光交付金 総額1000億円の枠の中で、消費者行政に回ったのは基金分も含めて25億円。2.5%だった。確かに、『知の拠点つくり』といった分野に、60%程度使われてしまったことは事実。そういったものが混ざりこんでいない方が、良いソフト対策中心の従来光の当たってこなかった行政に資金が回ることは確実だと思うので、そういった面で見直しが必要だと思う。
エ. 食の安全・安心のための地域消費者活動支援交付金(平成24年度の予算要求) 基金終了後、恒久的な、且つ、地方が自由に使える財源をいかに確保していくのか、ということは非常に重要なテーマ。それを踏まえ、過渡的な措置を考えていく。そのために今回、平成24年度の予算に向けて、「食の安全・安心のための地域消費者活動支援交付金」を、7億500万円要求した。これを庁内の一括交付金の流れの中で、きちっと活かしていけるように、ある程度恒常的な地域の消費者問題に取り組む活動に対する財政支援ができればと考えている。

*第二部 パネルディスカッション

 テーマ「今、地方消費者行政が求める、国の財政支援のあり方とはなにか」

 パネリストに、埼玉県県民生活部消費生活課課長 上原満さん、全国消費生活相談員協会理事長 丹野美絵子さん、NPO法人消費者ネットやまぐち副理事長 吉富崇子さん、そして、消費者庁長官 福嶋浩彦さんを迎え、池本誠司さんのコーディネ−ターで、ディスカッションを行いました。

 まずは、それぞれのパネリストに活動等の状況と“集中育成・強化期間”中の国の財政支援についてどのように考えるかお話しいただきました。

 埼玉県 上原課長からは、「埼玉県上田知事の「安心安全の観点から、県政全体を見直す。」という公約から、平成20年度から、消費者行政の大切性を市町村に理解してもらうため、職員が市町村に説明にまわりはじめた。同時期の消費者行政活性化基金のおかげで、現在では、全市町村に窓口が開設、市はすべてセンターになっており、全県で52市町村にセンターが設置されている。センターの整備も進んできたが、現在の課題としては、窓口を開いただけでは用を成さないので、これをいかに使ってもらうかというのが一つの課題。」

 消費者ネットやまぐちの吉富さんからは、「消費者ネットやまぐちは、設立して3年目。4月の下旬〜5月の上旬まで、約1ヶ月半を掛けて、13の市を訪れた。光交付金の活用、自主予算、相談員の処遇、市長さんの姿勢について、相談窓口の充実等、基金の話も含めて、活用されているのかどうかお伺いした。13の市について意見交換した結果、活性化基金については全市が取り組んだが、光交付金については3市のみ。取り組んだ内容を大きく分けると、相談員に関するもの、雇用、増員、レベルアップの研修の講座、県外の派遣等、県内での研修会等に多く使われていた。また、市長のリーダーシップが非常に大きいことを肌で感じた。活性化基金によって、13市のうち、11市には消費生活センターが設置された。残りの2市については、相談員の配置まではいったがセンターの立ち上げまではいっていない。が、全市13市に相談員体制を整えることができたのは成果だった。」

 全相協 丹野さんからは、「昨年の秋、会員に実態調査、アンケート調査を行った。活性化基金の使い方について、意見、感想を聞いた。活性化基金の主な研修事業として、消費生活相談員養成事業と消費生活相談員等レベルアップ事業があった。が、現実には、消費者教育活性化事業、グッズとかバスの広告、タウン誌の広告などに使われていて、これから本当に何に使われたか検証が必要だと思っている。相談員研修は、養成事業に関しては、全国の都道府県のほとんどでやっていたかと思う。しかし、税金を使ってたくさんの人が相談員資格をとっても、相談窓口が無いから就職するところが無い。養成した相談員を雇う為に古い相談員を解雇する、いわゆる雇い止めもあったようだ。また、現役の相談員のレベルアップ事業も、たくさんの自治体で実施された。悪質業者が難しいスキームを使って、消費者をだますというケース非常に増えた。法律の改正と実体の悪質化、難解化から、相談員も研修して常にブラッシュアップしていかないと対応が出来ない。研修が増えてよかったという声がある一方で、相談員の定数が少なく2人配置のところで1人研修に参加すると、残された人が1人で対応しなくてはならない、という問題も出てくる。今、自治体の財政はかなり厳しい状態。消費生活センターは丸投げされていて、消費者団体やNPOに投げられているところもあった。現在、入札、受託する相手が民間企業、営利企業ではないか、という報道もある。消費者は中立公正だと思って駆け込む消費生活センターが、民間企業がやるのでは消費者の期待に応えられないのではないか。国の支援は必要だ。」

 福嶋長官からは、「地方交付税というのは、自治体が自由に自分の意志で使える財源。消費者庁としては、住民の意思で消費者行政にちゃんとまわして欲しいと言うべきだ。自治体が自由に使える財源で、且つ恒久的なものというものを増やしていかなければいけないと思うので、そういう仕組みをちゃんと自治体へ尽くすことが大切だと思う。」という説明でした。

 その後、パネリストの皆さんからは、「活性化基金については概ね成果があり評価する。が、基金終了後は独自予算でと考えているが、大きな不安がある。」「本来は間違った使い方ではあるが、基金の為に独自予算を減らした自治体では、独自予算の復活ができるか心配。」との意見が出されました。

 消費者庁長官福嶋さんからは、「一般論で言えば、自治体行政は住民が直接かかわる部分が大きい。それなので、住民の意思で消費者行政に予算が回るようにして欲しい」と、自治体と住民の努力で消費者行政に予算を回すことをもとめる説明でした。

 その後のディスカッションでは、パネリストの皆さんから、「活性化基金については概ね成果があり評価するが、基金終了後は独自予算を考えてはいるが、どうなるか、大きな不安がある。」「本来は間違った使い方ではあったが、基金の為に独自予算を減らした自治体では、独自予算の復活ができるかどうか心配だ。」との発言がありましたが、福嶋長官からは「国の支援をなくすとは言っていない。しかし、一般財源を減らした自治体を、国が引き続き支援して、展望は開けるのだろうか。住民の意思をもって、このように運営していくと自治体に要求してもらいたい。住民の意識を高め、自治体行政、議会を変えるしかない。」とここでも、確実な国の支援についての言及はありませんでした。

 この討論では日弁連の消費者行政担当者へのアンケート結果が報告され、地方自治体職員の声として、「地方分権で進めていくのが本来の在り方だが、現在は時期尚早であり、国の財政支援がなくなれば自治体間の格差がますます広がる心配が大きい」などと紹介、報告されました。それに対し福嶋長官は「日弁連のアンケートは、全くの生の声だと思う。大多数の地方消費者行政担当職員の声がこうだと思う。しかし、これで地域の声を聞けたと思われると困る。なぜ、消費者行政に予算をまわさないのか、まわさない理由を、財政当局、議会、首長に、生の声で聞かないと、一番ネックになっているところが判らない。」と話されました。

 また、会場からは、消費者行政充実ネットちば、消費者会議かながわからも、活性化基金後が心配される自治体の状況などの報告がありました。

 それぞれの報告から、困窮している地方自治体への国からの確実な財政支援を広げる必要性が確認されたにもかかわらず、消費者庁からは確実に地方消費者行政の充実・強化に繋がる財政支援についての具体的な提案はありませんでした。

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