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PLオンブズ会議の活動
「消費者庁 事故情報一元化の現状と課題
全国消団連 PLオンブズ会議 2009年度報告会」を開催しました
 

 2009年度報告会は今秋に発足する予定の「消費者庁」での事故情報一元化とはどのようなことなのか?消費者庁事故情報一元化準備室の具体的な準備進行状況を聞き、そのうえで関係府省庁・関係機関で分散保有されている事故情報事例や米国CPSC(消費者製品安全委員会)の事例を参考にしながら、専門家による報告とパネルディスカッションを行い、「消費者庁事故情報一元化」の課題と問題を分析しました。

1.日時:2009年7月1日(水)13:30〜17:00

2.会場:主婦会館プラザエフ 9Fスズランの間

3.参加:170人

4.概要:

(1)報告

 長田三紀さん(PLオンブズ会議)の総合司会で進行し、清水鳩子さん(PLオンブズ会議) の開会挨拶の後、5名の報告者が現状報告や問題提起を行いました。

[1]報告1 消費者庁情報一元化の準備内容について

 内閣府消費者庁・消費者委員会設立準備室野村裕さんが、事故情報データバンクのシステム構築、事故再発防止のための専門機関との連携などについて、これまでの準備状況を説明しました。

[2]報告2 事故情報収集制度について

 NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)の川上景一さんが、これまでの実績に基づいて、全部で約25000件のデータが検索可能であること、情報を消費者のために生かすためにはデータベースの品質管理が鍵となることなどを報告しました。

[3]報告3 各省庁の事故情報システム

 土田あつ子さん(PLオンブズ会議)が、実際にデータベースの検索を行ってみた経験から、検索が困難な状況などを報告しました。

[4]報告4 米国CPSC(消費者製品安全委員会)の情報収集・公表システム

 宮本一子さん(PLオンブズ会議)が、現場の担当者の生情報を世界中から検索できる現状について報告しました。

[5]報告5「新消費者情報収集システムに関する提案」

 ナレッジオートメーション株式会社の谷村廣夫さんが「現状の膨大なデータをどのように絞り込むのか?どこまでの情報収集にするかを定めたら、システムの現技術を対応させるのはさほど困難なことではない。紙情報でも手入力しなくても、簡単な操作でデータ化は可能だ」などを報告しました。

(2)パネルディスカッション

 「消費者庁事故情報一元化の現状と課題」と題して、中村雅人さん(PLオンブズ会議)をコーディネーター、各報告者をコメンテーターに、パネルディスカッションを行いました。この中で明らかとなったのは以下の点です。

  1. 消費者事故情報一元化システムは「生命身体被害と取引被害」についても情報収集対象に含まれる。「重大事故」については「重大事故データバンク」等特別にシステムが構築される。
     
  2. 消費者庁ができるとNITEの事故情報データベースの指示元は経済産業省から消費者庁に変わることになろうが、NITEで行う実務の内容は変わらないのではないか。ただし、「非重大事故」についてどうするかはまだ固まっていない。
     
  3. 消費者庁には、行政の情報とともに国民(事業者団体や消費者団体・労働団体・福祉団体など)個々の情報が収集されるべきだが、情報の公開・保有・双方向性や紙ベース情報の処理など今後の整備に関わる事項が残されている。
     
  4. 消費者庁事故情報データバンクを「いつまでにどのレベルのものに作り上げるのか?」については早い時期の課題にしていきたいとの意向はあるが現時点で明確になっていない。
     
  5. ただいま現在事故情報として存在するデータのスピード感ある読み込み・絞込みがとりわけ大切になるので、検索エンジンの活用や事故情報入手のシステム設計に工夫を加えるべき。
     
  6. 一元化した事故情報データを多角的に調査・分析し、被害防止につなげるために「要注意情報の抽出、原因究明、原因調査」に向けた事故情報分析ネットワークの形成が不可欠。そのために消費者庁の自前技術スタッフの育成や外部機関との連携等の枠組み整理が必要。
     
  7. 消費者庁の事故情報データバンクは米国での事例に学び、「幅広い情報の取り込みと情報の公開」を進めて、一般消費者が使いやすいデータベースにつくりあげるべき。
     
  8. 事故情報データバンクの立ち上げまでに、やり遂げなければならないことがたくさんあることがわかった。消費者庁はこれらの困難な課題を乗り越えて、事故情報一元化を消費者にとって実りあるものにしなければならない。

(3)全国消団連PLオンブズ会議からの提言

 PLオンブズ会議メンバーの太田吉泰さんが今年度の「提言」(別紙参照ください)を発表しました(この提言は、内閣府消費者庁・消費者委員会設立準備室野村裕さんより、消費者庁・消費者委員会準備室にも配布されました)。最後にPLオンブズ会議メンバーの長見萬里野さんが閉会挨拶を行って、会は終了しました。

(4)参加者アンケート(回収数32枚)

 特徴的なご意見では、「途中からの参加でしたが、アメリカの製品安全委員会の情報収集の努力と、情報をいち早く公開する姿勢に感銘を受けました。また谷村様の具体的なお話は、今後消費者庁の仕事を考えていくうえで重要な提案かと思いました」「消費者庁に対して国民が今思っている疑問・期待は伝わったと思う。消費者庁発足においては今日の意見をなるべく生かしてより良い消費者行政を実現してほしい」「NITEは事故原因究明機関の立場からの意見が明確に述べられていた点が良かった」「パネルディスカッションで問題が整理されて理解が進んだ」などがあげられていました。

2009年7月1日

「消費者事故情報一元化」に対する提言

全国消費者団体連絡会PLオンブズ会議

 消費者事故情報の一元化は、消費者被害の予防と再発防止にとって極めて重要な課題です。目下、この秋にスタートする消費者庁が担うことになる情報収集・公表のシステムはどうあるべきか、に大きな関心が集まっています。消費者のために製品安全問題を広く検討してきた私たちPLオンブズ会議は、この問題について検討を重ねてきましたが、本日は多くの関係者の皆さんにもお集まりいただき、わが国の事故情報収集・公表の現状を明らかにするとともにアメリカの状況を参考に、消費者事故情報の一元化のあり方について意見を交換しました。

 本日の論議でも明らかになったように、わが国の事故情報収集の現状は、そもそも発想として「事故情報は国民の共有財産である」との基本的な考えに基づいておらず、多数の機関が情報を収集しているものの、それぞれの機関が縦割り的に保有し、共有化が十分に図られていません。特に、警察、消防や病院の保有する事故情報はその傾向が強く、消費者被害の救済や事故の再発防止・予防を難しくしています。

 また、収集した事故情報が直ちにそのまま公表されるようにはなっていません。公表しないか、公表しても加工して非常にわずかな情報しか提供しないものがほとんどです。公表の迅速性を含めて、消費者に役立つように情報が提供されているとはいえないのが現状です。

 更に、事故情報に基づいて原因究明を行い、事故の未然防止につなげていくことは今後に残された大きな課題です。

 このように現状のシステムは改善すべき大きな課題を抱えています。私たちは、消費者の安全・安心の確保に役立つ「消費者事故情報の一元化」の実現を心から願い、以下の点を提言いたします。



一、

事故データベースに収録される事故データは、消費者庁の名に相応しく、消費生活すべて

の分野を網羅し、また、警察・消防・病院を含め、全公的機関の所有する事故データや消費者団体などが収集している事故情報も加えること。
 

一、 事故データ収集に過大な費用を必要とする人的作業は避け、相互のデータベース間で自動的に情報が提供されるシステムを構築すること。加えて民間からの情報提供がスムーズに行われるようなシステムであること。
 
一、 原因究明につなげる仕組みを確立するため、収集された事故データの分析・原因解明に十分な人員を配置すること。
 
一、 被害の防止という観点を重視した公表制度とし、消費者をはじめ民間から情報へのアクセスがスムーズに行えるものにすること。

以上