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「都道府県の消費者行政を考えるシンポジウム 2009」
 

2009年2月21日

全国消費者団体連絡会・地方消費者行政調査プロジェクト 主催

TKP代々木ビジネスセンター 1号館 1階 ホール11A  76名参加

 消費者行政一元化政策の中で、現在の国の第2次補正予算案では、地方消費者行政支援策として、地方消費者行政活性化基金が盛り込まれています。今回のシンポジウムでは、2008年度の消費者行政調査から見えてきた問題点を共有し、これからの地方消費者行政の拡充について考える場となりました。

 第1部は「2008年度・都道府県における消費者行政調査」の報告、第2部は「地方消費者行政の充実強化について考える」と題し、内閣官房 消費者行政一元化準備室 参事官 木村茂樹さんをお招きして、報告とディスカッションを行いました。

*第1部 報告 「報告書から見えてきた、地方消費者行政の現状と問題点の共有

コーディネ−ター:
矢野洋子さん(東京連絡センター)
パネリスト:
池本誠司さん(弁護士)  
池田澄子さん((社)全国消費生活相談員協会)
飯田秀男さん(全大阪消費者団体連絡会)

 今年度の消費者行政調査報告書の特徴的な項目について、飯田さんから報告していただきました。また相談員の立場から相談現場の様子を池田さんから、まとめを池本さんからお話しいただきました。

池田さん

  • PIO-NETの端末は、入力端末と検索端末は別物で、現場では1台の端末を複数の相談員さんで利用していているところがほとんど。入力端末のないところは、端末のある県の機関に書面で送って入力してもらっている。そのため、即時性が乏しくなってしまう。
  • 相談員が悪質業者の対応をする場合、最近はすぐに業者から「上司を出せ」と言われる。しかし、職員が対応できない場合が多い。自分は経験の浅い相談員に代わって「上司ではありませんが、経験の長い者です。」と対応することがある。相談員が多い大きな市だとこのような形でも対応できるが、小さい市町村などでは特に、上司に当たる職員の力量も必要だと思う。

飯田さん

  • 大阪府には、現在43市町村の内、PIO-NETが24市に設置されている。来年度、10市町村が設置希望。そのうちの一村は、昨年村で受けた相談が9件の千早赤坂村。
  • 相談業務を委託する自治体が増える傾向にある。その中でこのような話もあった。
    2月8日に、大阪市の廃止事業仕分けのための委員会が開かれた。相談業務も俎上に上ったが、意外にも「民間委託にはそぐわない。」との結論だった。「専門性の高いものを民間委託にすることは、住民サービスには繋がらない。」と判断された。

池本さん

  • 平成10年度のあっせん件数の割合が約9%なのに対し、19年度の割合は相談件数が2倍以上になっているにもかかわらず約6%しかない。これは、相談員の配置が追いついていないことを意味している。
  • 消費者行政予算も半減。08年度の都道府県別の一人当たりの消費者行政予算を見た場合、170万人の標準自治体では17.6円。全国をみると、10円にも満たないところがたくさんある。
  • これらの問題点を充実させるべく、現在提案されている地方消費者行政活性化事業に取り組み、消費者行政の充実を図りましょう!

第2部 報告とパネルディスカッション 「地方消費者行政の充実強化について考える」

コーディネ−ター:
阿南 久(全国消団連)
パネリスト:
木村茂樹さん(内閣官房消費者行政一元化準備室 参事官)
池本誠司さん(弁護士)  
毛内良一さん(神奈川県消費者団体連絡会)
表 重雄さん(石川県消費者団体連絡会)

 『地方消費者行政活性化交付金』『地方活性化生活臨時交付金』と『地方交付税』について、木村参事官、池本さんにお話いただいた後、それぞれの地域の状況についてご報告いただきました。

報告(1)

『地方消費者行政活性化交付金』の概要について   木村 参事官
   3年で『地方消費者行政活性化交付金』約150億円と「国民生活センターによる地方支援事業」約90億円のあわせて約240億円、単年で80億円が使える。ただし、これだけでは4年目以降が続かない。「消費者行政」は、「警察」や「消防」のようなイメージ。地方の自治事務なので、自主財源で行うもの。計上的な経費は自主財源で賄わないと続かない。そこで、平成21年度以降、都道府県・市町村ともに標準団体の消費者行政に係る基準財政需要を倍増するので、ぜひそれを活用して4年目以降も継続的に事業を続けて欲しい。

報告(2) 『活性化交付金』『地方活性化生活臨時交付金』と『地方交付税』の活用について 池本さん
   21日現在、47都道府県すべてが『地方消費者行政活性化交付金』を申請済みとのこと。
自治体では、「『活性化交付金』は人件費には使えないという制約があるため、『活性化計画』の中に『相談体制の拡充(相談員の増員)』や『相談員の待遇改善』を盛り込むことができない。また3年間に限定された財源なので、4年目以降も続く継続的な事業計画を盛り込められず、どうしても啓発事業・広報活動・研修会など短期的・単発的な事業に限られる。」、などとの声がある。そこで『臨時交付金』『地方交付税』の活用が期待されるが、どちらも自治体内での配分の際、地方消費者行政の拡充・強化の方針が政策判断として決定されていない現状では、景気対策等に回され消費者行政の独自財源を確保できないことが予想される。
 『活性化交付金』の活用メニューの中にある「消費生活相談員養成事業」や「相談員レベルアップ事業」など、やり方によっては交付金を活用して実質的に相談員配置の増員ができたり、相談員の参加費用(日当に相当)が出せる場合もある。みんなで知恵を出し合って、事業提案や『臨時交付金』『地方交付税』の活用を、各自治体の首長・県議会などに働きかけていきましょう。

報告(3) 活性化計画に関して
神奈川県への要望・懇談等の取り組みについて   毛内さん 
 昨年「消費者会議かながわ」(県消団連・県相談員ネットワーク・横浜弁護士会・県司法書士会で構成)を結成。相談体制の強化など消費者行政の充実を求め、県への要請や県知事・県議会議員の理解・協力を深める活動を進めてきた。その結果、来年度は県の全体予算が削減する中、消費者行政予算が5,421,万円から9,103万円に増額され、相談員や関係職員が増員されることとなった。今後は、4月に入ってから県と「消費者会議かながわ」とで懇談し、「協同作品」として有効な事業計画を一緒に作っていきたい。現在、県民からもホームページ等で意見を募集している。
  国から予算を出すということは、100年に1度、300年に1度の千載一遇のチャンスなので、全国の消費者団体・関係者に呼びかけて、ぜひ全国的な推進運動としてみんなで取組みましょう!
石川県への要望・懇談等の取り組みについて    表さん
 1月23日、行政より石川県県民生活課課長・課長補佐、石川県消費生活支援センター所長、8市(加賀市・小松市・能美市・白山市・金沢市・かほく氏・羽咋市・珠洲市)の各消費者行政担当職員、消費者より県消団連・生協連・生活学校連絡会・新生活運動協議会が参加し、「08年度消費者行政調査報告」と「『地方消費者行政活性化基金』の活用」についての懇談会を開いた。市の中には単独の消費者行政担当窓口が無かったり、単独の予算もないところもある。このように、県内の自治体では基本的なことすらもできていないところも多い。その中で、・人口10万人以上の7市には「消費生活センター」の設置を・奥能登地域、中能登地域、南加賀地域に広域消費生活センターの設置・PIO -NETの増設(現在は県と金沢市にしかない)、など『地方消費者行政活性化基金』の活用の提案をさせていただいた。基金の活用はもとより、自治体間及び消費者と自治体の意見・情報交換の場となり、有意義な場だった。

会場発言  
佐賀県の相談員の状況
鯉川 実加さん(NPO法人消費者相談員の会さが)
 佐賀県から委託され、相談業務を行っている。相談員の増員に向けて資格取得講座を開いており、現在も6名の方が受けている。しかし、せっかく有資格の相談員が増えても、配置してもらえない。今回の『活性化基金』を使っての配置も、各市町村では3年後を心配して二の足を踏んでいる。
千葉県への要望・懇談等の取り組みについて
山田 多恵子さん(消費者団体連絡会 千葉)
 活性化交付金は5億円を申請。それとは別に、来年度は一般予算として180万円の増額。千葉県は市町村に事業についてのアンケートを実施しているが、反応が鈍い。市町村向けの内閣府の説明会を開催する。3月9日には、県との意見交換会を開く予定。
長野県への要望・懇談等の取り組みについて
小松 由人さん(長野県消費者団体連絡協議会)
 2月9日に長野県と懇談。交付金は、年額1億円で申請。今後、県の基金条例を改定し、使用項目に「消費生活の安定向上」を加筆。また、3〜4月に市町村からの計画を取りまとめて国に提出し、市町村は6月補正予算で今年度執行分を予算化する予定。
1月1日に「消費生活基本法」が施行されたこともあり、来年度の消費者行政についての一般予算要求額は2008年度の予算600万円から3,300万円に大幅増。人の手当ての面でも進捗があり、不当取引調査員に警察OB1名の増員があった。
大阪府における活性化基金の動向
飯田 秀男さん(全大阪消費者団体連絡会)
 大阪府の活性化基金の申請は総額7億円、初年度は1億80百万円。しかし、 市町村の計画が煮詰まっていない。9月の補正予算で通して、下期で実施と考えているようだ。消団連としては、4・5月に市町村と府に働きかけ、7月に具体的な案が出てくると良いと考えている。住民の声があがることが、議会への力となる。
東京都における来年度の消費者行政の動向
大野 正隆さん(東京都生活文化スポーツ局 消費生活課 副参事)
 今年度「消費生活基本条例」が11年ぶりの改定となった。首都として「良質な市場の確保」を目指す。2009年度予算は、本財政は税収減で減額だが、消費者関係予算は増額する。来年度の重点的取り組みとしては、消費生活センターの機能強化として、土曜日の相談窓口開設・相談員の増員・主任相談員の設置、また「適正表示指導員」を新たに配置などを計画している。『交付金』での活性化事業については、「オリジナル事業」を考えている。「消費生活相談員養成講座」「消費生活相談窓口高度化事業」など、こまごました環境にも合った相談体制が取れるような事業を考えていきたい。
岩手県の現状
伊藤 慶子さん(岩手県消費者団体連絡協議会)
 活性化基金については、2億7000万円を申請。1年目9000万円。これを環境生活部と県生活センターとで活用。絶対歳入が減っているので、一般予算から上乗せは難しい。地域的に誘致企業や土建業の派遣切りも多く、公務員も派遣が増加しているので「相談員は待遇が良くてうらやましい」と言われる。待遇改善というより窓口をどう残すのか?が問題。現在、窓口設置は6市のみ。町村は、県合同庁舎・県弁護士会で相談を受けている。
広島県の状況
岡村 信秀さん(広島県生活協同組合連合会)
 活性化基金3億6千万円を申請。1年では上限の1億2千万円。しかし、事業の中身については具体的ではない。やはり、県知事と財政担当者が理解していないとうまくいかないと思う。知事と懇談を持つ予定にしているので、話したい。行政・消費者団体が一堂に会して、共有化して県全体で考える動きが必要だと思う