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消費者行政の充実に向けて
〜2006年度・都道府県における消費者行政調査を終えて〜
 

2007年3月16日
全国消費者団体連絡会(全国消団連)
地方消費者行政調査プロジェクト

I .本調査活動の目的、経緯と、今年度調査について

1. 本調査の目的は、地方自治体(都道府県)における消費者行政の実態の一端を示すとともに、その調査結果を出発点に、その地の消費者団体が検証することを通して、今後の消費者行政のあり方を行政と消費者とがともに考え、その充実・強化に資することにあります。
 
2. 2001年度からの3回は、予算や職員数などの数値を加工し、総合ランキングという形で報告してきました。「数字だけで一律に判断できるものではない」などの意見をいただきながらも、消費者行政をめぐる状況の厳しさを数字上から明らかにすることで、問題提起してきました。
 
3. 2004年の「消費者基本法」制定や消費者被害の拡大を受け、2004年度からは消費生活条例の改正や消費者相談の実態、被害の未然防止・拡大防止に向けての取り組みなどを中心に調査してきました。
 
4. 2006年度も、消費者相談の現状と問題解決に向けての取り組みや消費生活条例の活用等について調査しました。予算配分をはじめとする消費者行政をめぐる厳しい状況が続く中、行政部門におけるさまざまな取り組みのようすが明らかになりました。
 

II .今年度の調査結果を受けて、今後の課題

1.

多様化・複雑化・巧妙化する消費者被害の解決に向けて

相談件数は高水準で推移し、その特徴的な傾向として、巧妙化する手口の悪質商法、インターネット関連、多重債務などの金融関連など、消費生活センターだけでは解決できない、あるいは、専門的知識が必要とされる事案の増加が見られ、あっせん解決率の低下にもそれが表れています。解決困難事例の増加は、新たな法改正(特定商取引法、割賦販売法、消費者契約法など)の必要性も示唆していますが、消費者行政部門におけるより一層の努力と取り組みの工夫も求められています。

[1]連携強化による事業者指導の強化を

関係部署における連携をさらに強めることが重要と考えます。自治体内での異部署間連携(例:高齢者被害防止のため福祉部門と)、複数自治体間の連携(東北、四国、九州など)、警察との連携(静岡など)などにより事業者指導の強化を図ることが必要です。

[2]解決事例の積み重ねにむけて措置の充実を

解決困難事例の削減に向けては、解決が図られた事例を積み重ねることが一つの方策と考えます。そのための具体的な措置として次のようなことがあげられます。

  • 消費生活相談員の増員とともに、専門的相談に対する対応強化のための相談員の研修強化。
     
  • 消費者行政担当職員が消費者行政の対応能力を身につけるための研修強化。
     
  • 公正・迅速な解決と同種被害防止を図るための苦情処理委員会(被害救済委員会)設置は、消費生活条例に規定されているが、活用はされていない。付託の実績をつくることによる活用促進。
     
  • 上記措置のための予算確保。
     
2.

地域の状況に応じた消費者政策を進めるために

消費者基本法制定や消費者被害・相談の急増を受けて、多くの県で「消費生活条例」の改正が行われ、事業者指導の強化など各地での取り組みが進んでいます。条例の活用をさらにすすめ、具体的に推進していくことが重要になっています。

[1]消費者基本計画の策定による、消費者行政の計画的な充実強化を

「消費者基本計画」が策定された(予定含む)のは17都県にとどまり、条例に策定の規定がない県が27道府県にもなります。消費者政策の推進にあたって計画ありきでないことは言うまでもなく、臨機応変で柔軟な対応も重要です。しかし、計画を策定し重点施策を決定するということは、行政が施策実施について意志を持つことであり、誰が、どこまでのことを、いつまでに行うのか、という具体的な推進方策を広く示すことになります。また、計画策定によって、その実施状況の検証・評価・監視が行われ、新たな施策につなげることが可能です。さらには、そこに消費者が参画し、意見表明を行うことも消費者の役割として重要です。

[2]消費者の申し出制度の活用促進を

ほとんどの県で、消費者の意見に積極的に答えるための制度として「申し出制度」(条例に違反する事業者の行為があるとき、または条例に定める措置が講じられないときに、措置を講ずるよう申し出ることができる)が規定されていますが、この3年間に申し出があったのは7都道県22件にとどまっています。活用されてこその制度であり、その活用を図ることは消費者・消費者団体の役割です。使い勝手が悪いなどの障害があるのであれば、その問題提起をしていくことも必要です。

[3]県域を超えた交流で、取り組みの普及を

消費者被害・トラブルは県域に関係なく、悪質な事業者の手口は共通するものも多くあります。そのような中で、被害の未然・拡大防止のための各自治体のさまざまな工夫・取り組みは、他の自治体にとっても参考となるものが多くあり、施策の交流を通して学び合い、先進的取り組みを普及していくことが必要です。
 

3.

都道府県と市町村との連携により、消費者被害のさらなる救済・防止に向けて

市町村で週4日以上消費生活相談窓口を開設しているところは、全自治体の半数に満たない状況です。地域の消費者行政担当部門ネットワークの中核を担う都道府県は、市町村との関係でその役割をどう果たしていくのか、市町村ごとの地域特性に沿った支援、連携が求められています。

[1]実態把握と連携の検討に向けて、消費者・消費者団体も役割発揮を

まず、市町村の消費者行政の実態を明らかにし、その上で、その地域に求められる施策は何か、都道府県の市町村への支援・連携のあり方をどう考えるのか、望ましい形はどのようなものかなど、具体的に検討することが必要です。調査・検討に当たっては、消費者・消費者団体が参画するなど、消費者の役割発揮も求められています。

[2]消費生活相談窓口の充実に向けた議論を

身近な自治体に相談窓口があることは住民にとって有益であり、市町村においても専門的知識を有する相談員の配置が望まれます。しかし、財政措置が取れない市町村も多いことは想像に難くなく、こうした状況を打開するための有効な措置は何か、各自治体での議論が必要です。
 

III .今後に向けて

1. インターネットの普及により、情報は瞬時に交換できるようになり、それらを利用して、被害情報や各都道府県の取り組み等の共有化も容易にできる時代になりました。そのような場が設定されることで、自治体間の学び合いが促進され、消費者・住民の安全な消費生活をめざした取り組みが広がっていくことを望みます。
 
2. 各自治体の消費者行政に対する消費者・住民、あるいは国からの期待は高まるばかりです。携わる現場の方々の奮闘が続く一方、県予算全体に占める消費者行政予算の減少、本課業務の人員配置縮小等の傾向は続いています。そういう状況の中で、期待に応えるための都道府県としての消費者政策のあり方について、行政、消費者・消費者団体、ともに考えていくことが必要です。
 
3. 相談業務の委託化が全県の1/3程度に浸透してきており(「検討中」を含む)、土日の相談窓口開設に伴って、部分委託を導入する自治体が増える傾向にあります。また、委託化の目的は「効率化」「専門性の活用」「相談体制の充実」となっています。消費者被害の救済や防止、消費者行政の充実に向けて、委託化がどういう意味を持つのか、あるいはそのあり方について、これまでの各自治体における事例を検証し、議論していくことが必要です。