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消費者政策分科会

発揮しよう!消費者の底力
〜消費者被害・団体訴権・消費生活条例
…消費者・消費者団体の役割を考える〜

<参加:66団体 106名>

 まず、消費者被害未然防止や消費者被害に遭った方々のための取り組みを報告いただいた。国民生活センターの福井さんは、今後予想される法令改正案の話題を交え「不招請勧誘の禁止」について。大阪府茨木市消費生活センターの松岡さんは、行政の立場から「訪問販売を断るためのステッカー運動」について。気さくな語り口に会場からは笑い声もあがった。北海道生協連の大嶋さんは、民間団体としては珍しい常設相談機関「コープくらしの相談室」について。相談者の立場を慮りながらの真摯な取り組みが参加者の心を打った。全国青年司法書士協議会の秋山さんからは、国会で審議中の貸金業法等の改正に関わる運動について報告があった。

 続いて、コーディネーターに池本誠司弁護士、パネリストに消費者機構日本(COJ)の磯辺さん、岡山県消費者団体連絡会の安場さん、東京地域婦人団体連絡会の長田さんの3人を迎え、パネルディスカッションを行った。パネリストや会場からの発言により、適格消費者団体をめざす各団体の準備状況、製品安全や法・制度改善に向けた活動、各自治体の消費生活条例改正の動き等、地方消費者行政の現状とそれに対する消費者団体の取り組みなどが明らかにされた。消費者・消費者団体として情報収集や意見表明、アクションを起こすことの大切さを考えさせられた。

 また、壇上や会場からの報告では、医療・介護サービスを受けるときの指針を提供する活動を行っている湘南ヘルスケアネットワーク21の寺山さん、インターネットの不当勧誘について調査した大学ゼミ生、大学生に対する意識調査アンケートをした大学生協など、新鮮な報告も多く、世代を超えた活動の広がりを見せた点も今回の大会の特徴である。この火を消さず、広範かつ深い活動にしていきたいものである。
 

食分科会

「食に関する情報を見分けよう」
〜はんらんする『安全・安心、危険・不安』に惑わされないために〜

<参加:47団体、150名>

 食に関する情報があふれている中で、消費者として、それらをどのように読み解くかの力をつけていったらよいかについて、午前中は科学ライターの松永和紀さんに問題提起をしてもらい、午後は、消費者、生産者、大学生(若者)、消費相談員によるパネルディスカッションを行いました。

 「食に関する情報を見分けよう」と題した松永さんの問題提起では、食の問題の多様化、大量の情報、メディアの問題報道で漠然とした不安が広がっていることや、消費者が誤解に基づき恐怖心をあおられていることを指摘、その例として、農薬や添加物をあげながら、センセーショナルに「危ない!」と報道するメディアや、それを安易に受け入れる消費者の姿勢も問題としました。

 パネルディスカッションでは「テレビ番組やCMなどに受け身の消費者からの相談が多い。消費者の視点に立った正しい情報を発信していきたい」(NACS・大道)、「若者はコンビニ弁当など便利なものに流れてしまいがちだが、できるだけ3食をきちっと食べることから訴えたい」(大学生協・杉田)、「生協などとつながりが多く、生産の経緯を説明したり、子どもへの食育にちからを入れている」(JA・坂元)、「複合汚染など、科学的には不明確なものもあり、長年の食経験に基づくものや地域の顔の見える関係のものを選びたい」(日消連・山浦さん)などの意見が出されました。

 また、食の情報をどのように入手し、見極めるかでは、インターネットを活用することの長所・欠点、マスコミの功罪にも留意しながら、生産者と消費者の対話、行政の活用など、多方面から多様な情報を集め、トータルに判断していくことが大切だ、などとまとめられました。
 

税・社会保障分科会

税・社会保障制度は誰のために?
〜若者・高齢者のくらしの実態から考える〜

<参加:36団体82名>

 前年の31団体57名を上回る参加となりました。近年とみに税・社会保障をめぐる「不公平感」「不信感」が話題となっています。私たち消費者は、税金や社会保険料をどのように払い、どのように使うか、またその執行が適正に行われているかに重大な関心をはらっています。その機能が十分果たされているという実感は非常に薄いというのが実情ではないでしょうか。

 今回の分科会は、今の日本の格差の実態や諸制度の中で住民生活がどうなっているかを報告していただき、あるべき「税・社会保障制度」はどのようなものか、参加者一人ひとりに考えてもらう、という構成で進行しました。午前中は、税制度の中で広がっている所得格差のしくみを「不公平な税制をただす会」富山さんより、医療制度のしくみを「日本生活協同組合連合会 医療部会」越野さんよりご講演いただきました。午後は、若者・高齢者・サラリーマン・中小業者と様々な立場の消費者の実態を報告していただきました。

 できるだけ多くの視点から今の日本社会の実態を明らかにしたい、という分科会の構成は、「自分が知らないことが多かった。帰ってさっそく勉強します」と、参加者の評価も高かったようです。

 また、今年度は税・社会保障の分科会としてはじめて、ニート・引きこもりと呼ばれる若者たちの問題を取り上げました。若者の問題については参加者からも質問や意見が出され、「税・社会保障制度の目指すものが本当に国民に共有されているのだろうか?」「このままでは制度そのものの存続が危ぶまれるのではないか?」など、今までと違った視点で考えさせられたことが、参加者のアンケートからも伺えました。
 

司法制度分科会

普段の自分で裁判員
〜参加意欲のわく制度へ〜

<参加:28団体、38名>

 午前中は、法務省が企画制作した「裁判員制度 −もしあなたが選ばれたらー」を上映し、制度の流れを確認した。その後、講師の四宮啓・早稲田大学法科大学院教授から現在考えられる裁判員制度について以下のような問題提起をしていただいた。

 「世界各国と比較しても日本は国民が司法に参加していない現状があり、裁判員制度は国民一人ひとりが社会的な責任をもち、自由で公正な社会をつくることが国民への呼びかけである。手続きや物理的問題なども含め様々な課題が挙げられている。また裁判員として裁判に「参加したくない」という調査結果もある。しかしその反面、「参加してもよい」と回答する国民も多い。また検察審査員の経験の感想をみても、裁判員として裁判に参加し、その後みんなで決めたルールをみんなで実現するという意義を国民は十分に感じているのではないだろうか。」

 午後は、裁判員制度の「評議」に焦点をあててのワークショップを行った。裁判員制度のキャッチコピー「私の視点、私の感覚、私の言葉で参加します。」のように、裁判員制度の「評議」は決して特別な事ではなく、日常生活にも同様のコミュニケーションがあることを体験によって気づくことを目指した。話し合いによる合意(コンセンサス)を体験することで、裁判員制度の評議の中で裁判員として話し合いに参加することとはどういうことなのかを理解することができた。参加者各自がコミュニケーションスタイルをお互いにフィードバックすることで、自分の話し合いへの姿勢に気づくことが出来た。

 最後に、講師の四宮さんから「裁判員に参加することで、社会のために正しいことをしたという満足感や達成感が得られ、それが社会全体に影響していくのではないかと」いうまとめが出された。
 

環境分科会

地球温暖化防止は、まったなし!!!
〜環境破壊の流れを変えよう〜

<参加:51団体、93名>

 午前中は、東京農工大学の瀬戸教授より「持続可能で公正な社会を −構想から行動へ−」と題した基調講演が行われました。最初に、環境問題は技術の問題ではなく社会の仕組みの問題であることが触れられました。今の都市社会は、物質循環が遮断されているため持続可能ではないこと、そのために地球温暖化・大気汚染・ごみ問題が発生していることが指摘され、それらの解決のために、都市社会を他の生態系(森林・畑地・水田・里山・海洋など)と組み合わせて物質循環を完結させることが必要であることを5つの区画モデルを示しながら説明されました。具体的に、水問題に対しては森林増加、生ごみ問題に対しては堆肥化推進、エネルギー問題に対しては自然エネルギー(太陽熱温水機、風力発電)によって対応すべきであることが話されました。また、マスコミが作り出す不要な需要や不要な公共事業の情報に惑わされないよう、我々消費者が正しい情報を集め、適切な判断、行動ができるようになっていくことが重要であることが話されました。最後に、今の経済活動は公正ではないことが指摘され、環境修復費用を支払うべき者に支払わせるために、EPR(拡大生産者責任)を導入することが不可欠であることが強調されました。

 午後のパネルディスカッションでは、気候ネットワークから「オール電化住宅は地球温暖化防止に寄与するのか?」、東京大気汚染公害裁判原告団から「大気汚染被害と公害裁判についての報告」、石綿対策全国連絡会議から「アスベスト対策の状況と問題点」、公害・地球問題懇談会から「環境アセスメント」について問題提起の報告がされました。その後、瀬戸教授にアドバイザーとして協力をいただきながら、参加者同士の意見交流を進めました。参加者からは、地球温暖化対策としての自動車削減、アスベスト使用実態調査、レジ袋削減の取り組み推進などについて意見が出され、また各団体の問題提起報告を聞いて「今まで知らなかったことが多い。今後も情報交換の機会を増やしたい」との声がありました。
 

くらしと憲法分科会

実感していますか?くらしの中の憲法

<参加:38団体、79名>

 憲法改正の論議が高まる中、改正を論じる前に、そもそも、現行憲法が、私たちの日々の暮らしの中で、生かされてきたといえるのか?この問題意識を起点として、現行憲法の理念およびその重要性を検証し、それ故にこそ、現行憲法の改悪は許さないこと、そしてそのためには、参加者の一人ひとりが、この崇高な憲法理念を、暮らしの中で豊かに培うよう努力する必要性があることを分科会参加者一同が確認しあい分科会は終了した。

 すなわち、まず、弁護士猿田さんからは、「遠い存在に見える憲法だが、身近に見える憲法問題を考えたい・・」の言葉を第一声として、自民党新憲法草案の問題点(戦争放棄を定める憲法第9条、憲法12条、憲法21条の2、憲法25条の2)の指摘、および、現行憲法の下ですら、公立小学校における憲法19条が保障する思想良心の自由への侵害が気づかぬうちに進行している事実を、先生が現実に関与されている「君が代、日の丸事件」の刑事被告事件等をもとに人権侵害の事件を具体的に話された。

 次に、司法書士澤田さんからは、現場における法律実務家の視点として、

 経済困窮者や生活保護の実態が提示され、現場では、いかに憲法第25条が保障する生存権が、踏みにじられているかが説明された。そして、このような現状に鑑み、われわれ国民一人ひとりが、憲法規範を生かすことの重要性を憲法の三原則(国民主権・平和主義・基本的人権の尊重)という大きな憲法の視点からだけでなく、個々の庶民の日常生活に密接に関連する人権侵害行為に注視していく必要性が述べられた。

 そして、最後にジャーナリストの郡山総一郎さんからは、カンボジアで

 取材経験から「戦争から何が生まれるのか」のテーマで、現在でも地雷が埋められている農村地帯、そしてそこで生活する人々の姿、また、ごみ山の中で、生きるために食べられそうな食物を探す貧困世帯の子供たち、多数の少年ホームレスや少女売春の存在とその生活実態、貧困のための臓器売買や売血によるエイズ感染の拡大等、映像をまじえながら、戦争がもたらす悲劇、戦争が残した爪あと、特に戦争によるしわ寄せが常に社会的政治的経済的に弱い立場おかれた人々、とりわけ次世代を担う子供たちの人権をもっとも

 侵害するものであるかにつき、映像を交えて赤裸々に提示された。そして、だからこそ、今、日本国憲法第9条が重要であること、現行憲法を守り抜く活動の社会的広がりの必要性が述べられた。

 会場から「最近の法改正の動き」「現行憲法と現実の乖離について、どのように考えるか」「大きな憲法と小さな憲法に分ける必要性」「今できることは何」等の質疑があり、各論点につき、議論がなされ、閉会した。