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「第2回日独消費者フォーラム 国際シンポジウム」開催報告

 内閣府国民生活局、フリードリヒ・エーベルト財団(本部:ボン、東京事務所:港区)、ベルリン日独センター(本部:ベルリン)、全国消団連(事務局:千代田区、神田敏子事務局長)の4団体が共催する「第2回日独消費者フォーラム 国際シンポジウム」が2月16日に、プラザエフ(東京・四谷)において、約100名の参加のもとに開催されました。

 2002年8月「第1回日独消費者フォーラム」をベルリンで開催した際に、日独の消費者団体が同様の関心事項を持っていることがわかりました。ドイツは国内の高い水準の消費者保護政策を背景に、EU内でも大きな社会的役割を果たしています。日本においても、団体訴権を始め消費者団体の社会的役割が期待されているこの時期に、改めてドイツの消費者団体の活動をより詳しく知る場として、今回「第2回日独消費者フォーラム」を日本で開催しました。

 第一日目は、ドイツから4つの報告と日本の消費者団として全国消団連が報告しました。

 第二日目は「日独消費者対話集会」をドイツ消費者団体と全国消団連会員との間で消費者団体訴訟制度に関する活発な意見交換というかたちで行いました。参加者からの質問を受けて、ドイツ側からは「公的資金をもらっても独立性は保たれていること、消費者センターでの相談受付・処理は、弁護士や各種専門家などがあたっており、これら職員募集は、新聞広告等で公募していること。相談は有料となっていいて一件1000〜7000円程度の費用。」等が報告されました。(全国消団連でまとめた報告要旨を参照ください)

 質問「団体訴権の受け皿について」に対しては、「日本のように国が相談を受け付け、団体訴訟を民間が担うというのはドイツでは考えられない。ドイツでは、団体訴訟をする場合は、法務経験者による消費者相談が前提となっているため、相談受付と訴訟は表裏一体と考えられる。その意味で法律の専門家による消費者相談が必要である」との回答があり、今後日本での新らしい課題の進め方について、参考となるアドバイスをいただきました。

<日独消費者フォーラム国際シンポジウムの概要>

◇ 開催日時:2004年2月16日(月)〜17日(火)
◇ 開催場所: 主婦会館プラザエフ地下2階「クラルテ」
◇ テーマ:消費者団体の活動と団体訴権〜ドイツと日本の状況〜
◇ プログラム:(1)〜(4)は第一日目、(5)は第二日目の企画。

☆ 当日の詳しいプログラムはこちら

(1)ドイツ消費者センター総連盟の組織と活動の概況
    ヘルケ・ハイデマン=ポイザー:ドイツ消費者センター総連盟法務部経済課長

(2)ベルリン州消費者センターの組織と活動の概況
    クリストフ・レーマベルリン:州消費者センター食品担当

(3)全国消費者団体連絡会(日本)の組織と活動の概況
    神田敏子:全国消費者団体連絡会事務局長

(4)ドイツにおける消費者団体訴訟制度とその活用状況
    ハンス−W・ミクリッツ:バンベルグ大学教授

(5)日独消費者団体対話

☆シンポジウム当日資料はこちら

☆ シンポの内容報告はこちら
            (全国消団連でまとめたものです)

対話集会の様子

 

◇ 報告「ドイツ消費者センター総連盟の組織と活動の概況」

ヘルケ・ハイデマン=ポイザー:ドイツ消費者センター総連盟法務部経済法課長

 ドイツ消費者センター総連盟(vzbv:Verbraucherzentrale Bundesverband e.V.)は、2000年に実施された組織構造改編により、それまであった全国組織、消費者団体連合会、消費者保護協会、消費者研究財団を一本化され誕生した組織である。所在地はベルリン市内で、職員数は74名。ドイツ消費者センター総連盟は、全国16箇所の消費者センター、主婦連合会、労働福祉協会、他23の社会活動組織をまとめている全国組織である。年間の予算は、2002年度で約860万ユーロ(約11億6千万円)であり、その9割近くは食料・農業省等からの交付金で、残りが出版物等の販売収入である。総連盟の活動目的は、消費者権利の保護である。当該目的達成のため、各消費者センター職員や各界オピニオンリーダー向けの研修、消費者向けの情報提供、不正競争防止法及び差し止め請求訴訟法に基づく団体訴訟などの活動を行っている。今回のテーマである団体訴訟や、不正競争に関連した問題などは、総連盟の重要なテーマであり、関連法の改正時には消費者代表として不備などについて指摘を行っている。

 総連盟は、ヨーロッパ消費者機構(BEUC)に属しており、EU域内の立法措置を踏まえたドイツ国内法の水準化に関する活動等も行っている。また、国際消費者機構(CI:Consumer International)にも理事会の一メンバーとして加盟しており国境を越えた活動を展開している。

☆資料はこちら

 

◇ 報告「ベルリン州消費者センターの組織と活動の概況」

クリストフ・レーマ:ベルリン州消費者センター食品担当

 ベルリン州消費者センター(以下「センター」)は、ドイツ国内にある16の消費者センターの一つで、職員は30名で、ベルリン市内を主な活動拠点としている。この16の消費者センターで合計200箇所以上の相談所を運営している。センターの活動資金は、ベルリン州保険・消費者保護省からの助成金で賄われているが、運営の独立性は担保されている。財源的には厳しく、2005年には4,000万円近く(予算総額の15%)削減が予定されている。センターは、(1)法律相談実施の権限(2)債権の法的回収を請求する権限(3)不当競争及び消費者を混乱させる広告を訴える権限を持っている。

 主な活動は、消費者からの各種相談対応、各種情報提供・普及啓発、各種研修開催などである。消費者相談分野は金融サービス、食品及び栄養、建築・住宅及びエネルギー問題が主で、これ以外にも貯蓄・投資、建築資金の調達、医療・介護、賃貸契約、クリーニングなどに関する相談も受け付けている。相談のモットーは「自助のための支援」であり、消費者には、「市場における自らの力を認識し、不足している部分について支援を受けながら自主的に活動する」という考え方で相談をおこなっている。

 一方、自己破産の証明を行うことで、消費者保護に反する行為を停止するよう業者に要求できる資格を与えられており、裁判所以外で行える唯一の機関として認識されている。ドイツにおいても自己破産は多く2002年における破産者の債務総額約5,000万ユーロ(日本円67億5千万円)に上る。

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◇報告「全国消団連の組織と2003年の取組みと今後の課題」

神田敏子:全国消費者団体連連絡会 事務局長

(報告省略)

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◇ 報告「ドイツにおける消費者団体訴訟制度とその活用状況」

(前出ポイザーさんが報告)

 ドイツでは、法による消費者保護に長い伝統があり、個人は裁判所外で様々な紛争処理(ADR)を持っている。2002年1月から、債権法の改正により消費者から消費者団体に譲渡された債権(業者に対する金銭支払い要求権)を裁判所に訴える事が可能となった。これ以降、団体訴訟に関する判例が確立していき、ドイツ国内における消費者保護の動向に大きな影響を与えている。一方、不当な競争などによる被害の未然防止など効果的な消費者保護実施にあたっては、ドイツ消費者センター総連盟は、団体訴権を有する消費者団体が不当競争や消費者を誤認させて得られた利益を還元するよう要求できる利益返還請求権を盛り込むことを要求している。この利益返還請求権は、企業が不正を働いた結果得た不当な利益を剥奪し、消費者の利益・権利保護のための活動などに活用できるようにすることが目的とのことであった。

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◇報告欧州各国との比較から見たドイツにおける消費者保護の法的枠組み

ハンス−W・ミクリッツ:バンベルグ大学教授・在ベルリン欧州消費者法研究所所長

 団体訴訟の分野(特に不正競争防止法、普通取引約款法に基づくもの)において、ドイツは欧州内での先駆的役割を果たして来ている。EUでは、EC委員会が指令を出し加盟各国が実情に合わせて指令を実施する。ドイツを模範としたEC指令には以下のようなものがある:

  1. 1984年 消費者を誤認させる宣伝に関する指令
  2. 1993年 消費者契約における濫用的条項に関する指令
  3. 1997年 通信販売に関する指令
  4. 1998年 国境を越える差止訴訟に関する指令

 現在、EUに於ける大きなテーマの1つが、ダイレクトメールによる宝くじ当選通知に纏わる問題である。一例をあげると、チェコスロバキアのある業者が、ドイツの郵便システムを利用し、フランス在住の消費者に宛てて郵送した宝くじ関連のダイレクトメールにより不正行為が発生した。この不正行為をどのように取り締まるか?というものである。各国の国内法においてはそれぞれ対応するが、A国とB国にまたがる場合には外務省が仲介して話を進めているため、相当な手間と時間を要してしまう。そこで出てきた発想が、EU域内の市民間で協力して行う国境を越えた団体訴訟である。しかし、現状のEU内ではクリアしなければならない問題もあり、今後EUが連邦制に移行することを踏まえ、域内の団体訴訟は大きな課題となっている。

 一方、集団的損害賠償を求める団体訴訟も注目されている。ギリシャでは、大手銀行と消費者間で団体訴訟が活用された結果、消費者が勝訴し約8万ユーロの損害賠償金が支払われた。しかし、得られた損害賠償金は検討した結果、国庫に収めることになった。団体訴権を持つ機関は、賠償金については、消費者の利益・権利保護のために活用されるべきであり、それでは団体訴訟が減少すると不服だったようだ。ドイツでも不当利益返還請求権の付与を巡って議論が進んでいるが、「何をもって不当とするか?」について、議論が白熱している。

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